山口洋子「よこはまたそがれ」も阿久悠「勝手にしやがれ」もサザン「勝手にシンドバッド」もインスパイア?それとも盗作?


保科省吾[コラムニスト]

***

古い話で恐縮だが、昭和52年(1977年)頃、「アディ・エンドレ詩集」と言うのを読んでガーンと頭を打たれたようなショックを受けたことがある。

それは「よこはまたそがれ」[山口洋子(作詞)平尾昌晃(作曲)五木ひろし(歌唱)昭和46年1971年3月1日]と言う曲を知っていたからである。今までの演歌にはない斬新な歌詞で、ブルースのような歌詞であるなあ、と思った。

以下、筆者が知り得た時系列で記す。

まず、現在も暗記している「よこはまたそがれ」の歌詞。(以下引用)

(1)よこはま たそがれ ホテルの小部屋

くちづけ 残り香 たばこのけむり

ブルース 口笛 女の涙

あの人は行って行ってしまった

あの人は行って行ってしまった

もう帰らない

(2)裏町 スナック 酔えないお酒

ゆきずり 嘘つき 気まぐれ男

あてない 恋唄 流しのギター

あの人は 行って行ってしまった

あの人は 行って行ってしまった

もうよその人

(3)木枯らし 思い出 グレーのコート

あきらめ 水色 つめたい夜明け

海鳴り 灯台 一羽のかもめ

あの人は行って行ってしまった

あの人は行って行ってしまった

もう帰らない

鼻歌などでこの歌を歌っている頃に見たハンガリーで最も偉大とされる詩人アディ・エンドレの詩は次のようなものだった。

海辺 たそがれ ホテルの小部屋

あの人は行ってしまった、もう会うことはない

あの人は行ってしまった、もう会うことはない

 

あたりに漂うあの人の残り香

波の音が聞こえる、心なき海の楽しげなその歌

波の音が聞こえる、心なき海の楽しげなその歌

これは今読み返してみても、やっぱりびっくりする。山口さんの歌詞の2番は、完全に演歌の歌詞であまり魅力がない。それにくらべて、1番はすごい。山口さんはこれにインスパイアされたというのだろうか。日本作詞大賞受賞曲であるから、インスパイアという認定なのだろう。

インスパイアとか「本歌取り」とかオマージュとか、これらは、文化を豊かにするからどんどんやった方がいいと思う。阿久悠さん作詞の「勝手にしやがれ」はフランソワ・トリュフォー原案、ジャン=リュック・ゴダール監督のヌーベル・バーグ映画「勝手にしやがれ」からのインスパイアだろうし(もっとも、邦題をつけたのは日本の映画会社社員だろうから、そこからのインスパイア)、サザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」は阿久悠さん作詞の「勝手にしやがれ」と「渚のシンドバッド」の、諧謔、お道化である。

桑田佳祐さんは「ただの歌詩じゃねえか、こんなもん」という本も出しているくらいだから、それを考えれば、「よこはまたそがれ」は、「たかが歌謡曲じゃないか」と言うことか。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。