<元海上自衛隊トップ・海将が緊急提言(6)>「自衛隊」という組織の行為は「国家の意思」そのものである


伊藤俊幸[元・海上自衛隊 海将]

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これまでの記事はこちら|http://mediagong.jp/?author=229

今回はのテーマは「国際社会における軍隊の位置付け」についてです。

「お金を出すだけで『軍人を一人も出さない』場合は国際社会から『参加』として認識されないことは皆様も良くご存じのとおりです。」

と、別稿でも述べました(http://mediagong.jp/?p=11441)。皆様の中には、

「何を言っているのだろう?」

という方も多かったのではないかと思います。

これはおそらく軍隊に対する考え方が我が国と他国とでは少し違うからだと思います。常識的な国際社会においては、国家が軍隊を派遣するのは「『国家意思』の表明」と認識されるということです。

1991年1月「対イラク武力行使容認決議」にもとづき我が国は130億ドルという多額の資金を提供したにも関わらず、戦後クウェートによる感謝リストに日本の名がなく、その後、海自掃海艇を派遣、浮遊機雷を排除して初めて認識されたことは皆様ご承知の通りです。

しかし当時、実際に武力行使そのものに参加したのは、米国以外は英国を含むほんの数か国だけでした。これは2001年の米国同時多発テロ後の各国の対応も同様でした。

実際に武力行使をしたのは米国と英国等だけで、ほとんどの国家はフロリダにある中央軍司令部に連絡官を派遣しただけや、1隻の艦艇を回航しただけでした。

国連のPKO活動もそもそもは国連憲章にはない概念で、平和的手段で世界の平和を維持するという国連憲章第6章の概念を具現化するために作られたものです。その場合のプレーヤーは自己完結できる各国軍隊等とされています。

ブラヒミ報告後、今や所謂「第7章型PKO」に変わりましたが、その参加方法は各国に委ねられています。実際に我が国やシンガポール等は従来の第6章型のままで参加できています。

つまりこれら集団安全保障措置に「軍隊を派遣する」ということは、「各国の意思」による或いは「各国に適した方法で良い」ということなのです。

2011年の福島第一原発事故の際、陸上自衛隊のヘリコプターが上空から海水をかけたことはご承知だと思います。実際には原子炉に少ししかかからず「何をやっているのか」と思われた方も多かったと思います。

しかし放射能濃度が高い上空を飛行し放水した行為こそが国際関係において極めて重要なことでした。米国政府は「日本政府はついに本格的に危機対応に乗り出した」と認識し、初めて日本支援に本腰を入れたのです。

このように他国であれば「軍隊」我が国の場合「自衛隊」という組織の行為は、国家の意思そのものなのです。

 

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伊藤俊幸

伊藤俊幸(いとう・としゆき)元海上自衛隊トップ・海将。 昭和33年生まれ。防衛大(機械工学)卒業。筑波大学修士課程修了。海幕防衛部防衛課(平成6)、潜水艦あらしお副長兼航海長(平成8)、潜水艦はやしお艦長(平成9)、外務事務官(平成11)、第2潜水隊司令(平成14)、海幕監理部総務課広報室長(平成15)、海幕指揮通信・情報部情報課長(平成18)、情報本部 運用支援担当情報官(平成21)、海幕指揮通信・情報部長(平成22)、海上自衛隊 第2術科学校長(平成23)、統合幕僚学校長(平成25)を経て。平成26年、呉地方総監。平成27年退職。