<漫画「小さな恋の物語」の魅力>キャラも年齢も状況も変わらずに続いたラブストーリー


柴川淳一[郷土史家]

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みつはしちかこ氏の名作ストーリー4コマ漫画「小さな恋の物語」1962〜2014)。半世紀も連載された「チッチとサリー」のラブストーリーだ。しかし、2014年9月に発売された最終43巻では、最終回がハッピーエンドでなかったことから、少々センセーショナルな動揺が巷の漫画ファンの間に走った。

この漫画に読者が期待した大団円は「恋の成就」、「チッチとサリーの結婚」である。かつてのファンの中には、「チッチとサリー」はとっくに結ばれて物語は完結したものと思っていた人もたくさんいるのではないか?筆者もその一人である。

筆者が、初めて友人の漫画好きから「小さな恋の物語」を借り受けて読んだのは高校一年の時、45年前のことである。45年、50年と簡単に言うが大変な時間の流れである。

作者さんのなかには永年描いているとキャラクターの顔やタッチが変化する方がいる。当たり前かもしれない。作家が歳を取るのだから、キャラクターが変わらないわけがない。

アトランダムに挙げるなら、「カムイ伝」(白土三平・1964〜)、「あしたのジョー」(ちばてつや・1967〜1973)、「巨人の星」(川崎のぼる・1966〜1971)。あの「ゴルゴ13」(さいとうたかを・1968〜)ですら、初期から比べると「デューク東郷」の表情は変化している。性格すら変貌している。連載当初の「デューク東郷」は実に饒舌だった。

これは、さいとうたかをの制作グループが主人公に物語の進行の説明をさせてしまったからである。今、読み返すと、読者としては、それも悪くないと感じる。

横山光輝の「コマンドJ」(1965〜1966)などのように、主人公の顔が別人にすげかえられたケースもある。これは、少年雑誌に連載中、どう見ても16歳か17歳にしか見えない主人公が煙草を吸ってしまったのである。その週の2、3号後に主人公の顔は27、8歳の男の顔にすげかえられてしまった。

某教育団体からのクレームによるものだと言う。しかし、これは、ナンセンスだ。「コマンドJ」は主人公は少年だが内容はスパイアクションもので、車は運転するし、拳銃の名手と言う設定だ。当時の「大人の教育者達」の余計なお節介が堪らなく嫌だった。

読者の子供達は横山光輝の名作「伊賀の影丸」(1961〜1966)風のスパイアクション漫画が読みたかったのだ。

さて、みつはしちかこの「小さな恋の物語」のチッチとサリーは半世紀間、年齢も、チッチの身長も、ふたりの環境も、淡い恋愛感情も、変わらずに時間を超えて現在まで続いて来た。驚異である。作者のみつはしちかこ先生には「ありがとうございます。お疲れ様でした。」と言いたい気分だ。

ラストシーン近くでチッチが「私のことが嫌いになったの?」とサリーに尋ねる。「そうじゃない」とサリー。そして、さらに言う。

「僕らはいつまでも今のままの僕らじゃいられない。変わらなきゃいけないんだ。」

作者が読者に贈ったメッセージを、筆者ならずとも、しみじみとかみしめてしまうはずだ。

 

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柴川淳一

柴川淳一。郷土史家。1954年香川県生まれ。明治大学卒業後、地方銀行に37年間奉職。