<定年=戦力外通告にめげない生き方>司法試験に最高齢65歳で合格した定年退職公務員の「あきらめない人生」


柴川淳一[郷土史家]

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『65歳で司法試験合格 私の勉強法』(ぱる出版・2015年8月25日初版)という面白いタイトルの本を見つけた。

著者は吉村哲夫氏。福岡市市民局長、東区長、監査事務局長などを経て2010年福岡市役所を定年退職。その後、2011年に京都大学法科大学院(既修)へ入学。2014年の司法試験に最高齢65歳で合格。現在、最高齢の司法修習生である。

この人の生き様はやはり凄まじい。筆者も含め定年退職期にある人なら誰でも覚えがある、高齢の為の記憶力・暗記力低下、緑内障による強度の眼精疲労、とてつもなく遅いパソコン入力、歩けなくなるほどの腰痛、等々。そして、ほとんどのこの世代の人たちは、それらの症状を言い訳にして「新しい一歩」をあきらめる。

しかし、吉村哲夫氏は違っていた。「定年という名の戦力外通告」をものともせず、奥様と共に京都に移住する。振るえる手で気力を振り絞って、紙おむつをして司法試験を受験する。ハンディを長い人生の知恵と経験でひとつずつ根気良く克服して行く。余生でなく人生を力の限り生きて行く。

孫のような京都大学法科大学院(既修)の同級生達と対等に付き合い、切磋琢磨しながら司法試験を目指した。その際、決して過去の経験や公務員時代の思い出等は口に出さない。

同級生達と自分の目標は司法試験に合格する事であり、余計な事は言わない。筆者にはとても真似できない。もし、筆者がそういう状況にいたら、若い同級生を前にして、ついつい尊大な物言いをしてしまうに違いない。

吉村哲夫氏は高齢を言い訳にした弱音を決して吐かない。

「腰が痛い。目が疲れる。肩が凝る。覚えられない。トイレが近い。パソコンが固まった。」

なんてことは言わない。

健康に気遣いながら、弁護士になるという夢の為に、真面目に、静かに、壮絶な努力を日々こつこつと続ける。そして司法試験が全て終了した時には、疲弊しきって試験場から奥様に担がれて帰宅したほどだ。

しかし、徐々に健康を取り戻しつつ、さらに若々しくなっている。服装もデニムパンツに綿シャツ、ヘアスタイルはソフトモヒカンと、同級生の友人の感化を受けていく。良いことである。筆者も含め同世代の人々は大いに見習うべきであると思う。

 

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柴川淳一

柴川淳一。郷土史家。1954年香川県生まれ。明治大学卒業後、地方銀行に37年間奉職。