<団塊の世代のバカたち>酒に酔うと必ず裸体になる銀行支店長の話


柴川淳一[郷土史家]

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かつて地方の銀行マンをやっていた筆者。振り返ってみれば、数多くいた団塊の世代のおバカな銀行支店長たち。そして、みんなそれぞれ、行動がきわだっていた。行動が常軌を逸していた人物が多いと言う意味である。

ある支店長は宴会で裸になる癖があった。貧相な男だったが、酒に酔うと必ず脱いだ。行員たちはみな大迷惑した。

見たくもない醜い姿を強制的に見せられる苦行を、1〜2時間ほど我慢しなくてはならない。忘年会や送別会では、その悪癖は恒例行事化していた。もはや癖というより病気であった。

ところが、部下はこの醜悪きわまりない支店長に対して誰も諌言できない。なんという非常識だろう。

ある年の3月、田舎銀行には珍しく、京都の国立大学法学部卒の新入予定者が試採用で支店にやって来た。その試採用の大学生の歓迎会で、くだんの支店長は、例によって、酒に呑まれて、脱衣して踊った。

試採用の大学生は言った。

「馬鹿はどこにでもいますね。」

はっと、われにかえった社会人の先輩である銀行員一同。銀行というある意味、社会の常識から、隔絶された奇妙な組織のメンバー達は、京都の大学生の呟きを聞いて、失っていた「当たり前の大人の常識」を、思い出した。

その結果、支店のメンバー達は支店長の破廉恥な行動を本部に訴えた。しかし、京都の大学生は、採用辞退を申し出て、二度と再び、この銀行には寄り付かなかった。

裸癖の支店長が、人事部とコンプライアンス担当部から、ヒアリングを受け、奇行を咎められ、自宅謹慎処分の後、支店長職を解かれたのは気の毒だが、その事実を鑑みれば当然の成り行きだ。

組織の人事統括者が、組織の中間管理職の日常的素行の悪さを矯正したり、情報を得るのに何の躊躇がいるだろうか。大学生にこう言われて初めて気付くようではいけない。

「馬鹿は、どこにでもいますね。」

 

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柴川淳一

柴川淳一。郷土史家。1954年香川県生まれ。明治大学卒業後、地方銀行に37年間奉職。