<ドラマ「LEADERS」の語られなかった話②>日本が真の映像大国になるには「レインボーブリッジを封鎖せよ」


貴島誠一郎[TBSテレビ制作局担当局長/ドラマプロデューサー]

 

TOYOTAの創業者を描いたドラマ「LEADERS」は、主人公たちが苦闘した昭和の時代の空気を再現するために日本全国にロケ地を求めた。

世界遺産に登録寸前の富岡製糸場は戦後の東京駅と病院に。日本銀行本店は日銀総裁が重要な役割を果たしていたため、報道以外では初めてのロケ。自宅は島根奥出雲のたたら製鉄で名を馳せた糸原記念館。戦前の自動車工場に見立てたのは京都綾部のグンゼ本社や愛知のユニチカ豊橋工場、兵庫の日本毛繊加古川工場、漁網の桃井製網赤穂工場、TOYOTAの元町工場にも協力いただいた。

昭和の名残のあるロケ地は関東より関西や中京地区に多い。土地の余裕や価格の問題もあるが、創業家の意思や古いものを大切にしたりする風土にもあるのかもしれない。

また文化遺産を単に保存展示するのではなく、大井川鉄道のSLのような動態保存、つまり現役として生かしながら展示していく合理的考えがある。フィルム・コミッションや市役所も街興しの一環として文化遺産の保存に熱心である。関東では茨城県が熱心だ。

「LEADERS」では、戦後の名古屋の街並みを求めて、上海電影撮影所でもロケをした。映画「ALWAYS~三丁目の夕陽」やドラマ「華麗なる一族」で緑の市電が走る印象的な大オープンセットだ。

上海電影撮影所にわざわざロケに行く理由は、撮影所に行かなければ理解できない。戦前の上海の金融街を再現しただけでなく、学校から警察署、ホテル、教会から池のある公園、石畳のある三國志の時代の老街などのオープンセットと共に、当時の自動車やトラック、エキストラの時代別の衣装に至るまで、ありとあらゆる時代劇が撮影できるテーマパークになっている。

看板さえ掛けかえれば、名古屋にもウォール街にもなる。

もともと民間でスタートした撮影所であったが、ハリボテのオープンセットでは利用が続かなかったものを、国のコンテンツ政策によって石造りなどの実物に建て替えた。その結果ジャッキーチェンなどの香港映画も誘致できるようになった。

撮影所の使用料とテーマパークの入場料だけでペイできているとは思わないが、文化資源としての撮影所の効果を政府が理解している。数年後には青島に更に大規模な撮影所を建設してハリウッド映画を誘致するそうである。

日本にも東映太秦撮影所などの民間施設はあるが、経営は苦しい。韓国でも海外の映像展開は国策である。映像大国・アメリカに至っては撮影使用料を警察署に払うだけで、マンハッタンのブルックリン橋をパトカー先導で封鎖してくれる。撮影と知れば、運転手も渋滞にもかかわらずクラクションを鳴らさない。

日本がアジアの映像大国になるには、まずレインボーブリッジを封鎖せよ、である。

 

 

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貴島誠一郎

貴島誠一郎(きじま・せいいちろう ) TBSテレビ制作局担当局長、ドラマプロデューサー 山一證券を経てTBSに入社、現職。1957年、鹿児島県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。貴島がプロデュースしたテレビドラマは、山口智子、常盤貴子、松嶋菜々子、矢田亜希子ら、多くの女優の出世作となっている。『ずっとあなたが好きだった』(1992年)『ダブル・キッチン』(1993年)、『スウィート・ホーム』(1994年)、『愛していると言ってくれ』(1995年)『官僚たちの夏』(2009年)、『LEADERS リーダーズ』(2014年)など多数。