EU離脱をめぐる英国の議論に見る「日本の民主主義」の未熟さ[茂木健一郎]


茂木健一郎[脳科学者]

***

英国がEUから離脱すべきかどうかを問う国民投票が6月23日に迫っている。BBCや英国の新聞を読んでいると、離脱賛成派、反対派それぞれが論陣を張っていて、情勢が予断を許さないことも含めて、大いに盛り上がっている。

EU離脱の是非をめぐる英国の議論を見ていて、気付くことがいくつかある。一つは、いわゆる「党議拘束」がないこと(その発想すらない)。このような重大事においては、個々人が判断するのが当然であって、政党のような組織が決めるべきことではない。

また、EUにとどまること、あるいは離脱することのメリット、デメリット、予想されるシナリオについて、実質的な議論が行われていること。事実の認識やその解釈が異なることは仕方がないとして、その差異が討論を通して浮き彫りになっている。

【参考】<報道の危機?>政権に及び腰の「お行儀よすぎる記者会見」の常態化に危惧

さて、ここ何年かの日本の国政を見ていると、国の将来を左右する重大な案件について、政党といった組織から離れて、個々人が判断すること、そして、賛成反対の実質的な議論が行われること、という条件が、果たして満たされていただろうか。

政党という組織が方針を決め、個々の議員はそれに従う、というのでは、生身の人間が代表をつとめる代議制をとっている意味が、そもそもないと思う。それでは、数合わせのロボット議会になってしまうからである。

また、今回の参議院選において、果たして、選挙後の政治プロセスで論点となることが本当に議論されるのか、過去の経験に照らすとどうもあやしい。今回の英国のEU離脱に関する長く実質的な議論と同じことは、日本の国政では、どうも起こらない。

一人ひとりが、自分の意見をきちんと持ち、それをぶつけあう議論を行うことが、民主主義の基礎だとすれば、日本にはまだそれは根付いていないように見える。今回の英国のEU離脱をめぐる議論の充実を見ていて、そんな思いを新たにした。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。