<「ポケモンGO」が生み出す>テレビが作り出せなくなった一体感[茂木健一郎]


茂木健一郎[脳科学者]

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ファミコン(1983年)が出た時、ぼくは大学生で、家庭教師先の黒坂くんが、休み時間に「先生、やりましょう」と持ってきた。それで、黒坂くんと、「10分だけね」とやったのが、スーパーマリオブラザーズ(1985年)で、実際腰を抜かすほど面白かった。

あれから、さまざまなコンピュータゲームが出たけれども、やはり、ファミコンの「スーパーマリオブラザーズ」を最初にプレイした時の衝撃を超えるものはなかなかない。斬新さと、オリジナリティと。時代は、案外、繰り返さない。

昨日、街を歩きながら合間に「ポケモンGO」をやってみて、「スーパーマリオブラザーズ」の衝撃を思い出していた。位置情報を活かして、AR(拡張現実)を用いるゲームはこれまでもあったが、ようやく、マスに届くものが生まれたような気がする。

多くの人がすでに指摘しているところだが、「ポケモンGO」をプレイしていると、周囲の空間に対する感覚が変わる。プレイしていない時にも、このあたりにはどんなポケモンが、と半ば無意識に考えるようになる。ポケストップやジムなどのランドマークも、つい探す。

【参考】「ポケモンGO」は自閉症にとってのコミュニケーションツール[茂木健一郎]

ポケモンが出現した時に、周囲の景観にポケモンが重ねられるAR(拡張現実)も、特別感がある。常にARなのではなく、ポケモンが出現して、捕獲のアクションに入った時だけに立ち上がるという仕組みが、おそらく良いのだ。そのことで、周囲の見慣れた現実に、魔法がかかるような気がする。

おそらく、位置情報やARを活かしたゲーム、サービスは、これから無数出てくるだろうが、「ポケモンGO」は、かつての「スーパーマリオブラザーズ」のように、「そのジャンルで初めて」の画期的なゲームとして、これから長く記憶されることになるのだろうと思う。

「ポケモンGO」のもうひとつの特徴は、仲間意識、一体感を生み出すことにあるのかもしれない。昨日、街で、あきらかにプレイしている人たちの姿を何人も見かけた。テレビなどのメディアがすでに作り出せなくなっている一体感を、新しい位置情報ゲームが、奇しくも生み出す結果となった。

 (本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。