<ミュンヘン乱射事件>テロはかたちを変えた現代の「自殺」[茂木健一郎]


茂木健一郎[脳科学者]

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7月22日、ミュンヘンでも乱射事件が起こった。今回の犯人である18歳の少年には、宗教的背景はなかったようだが、過去の乱射事件への強い関心を示していたという。

今や、テロは、どこでも、いつでも、「ランダム」に起こるような印象である。そして、宗教的な動機が語られることも多いが、私は、順番は逆ではないかと思う。まずは、ある一人の人間が、精神のバランスを崩すのである。その「理由付け」を、逆に、宗教に求める。

テロ実行犯の多くが死亡しているところを見ても、テロは一種のかたちを変えた「自殺」であろう。その際に、多くの、関係のない人たちを巻き込む。許しがたいことだが、そのような精神のバランスの喪失に、「宗教」があとづけで理由として使われているように見える。

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本来、宗教には、社会から疎外されたり、少数派の人たちに「居場所」を与える機能があったのであろう。それが、一部の過激な人たちの主張によってのっとられ、今日の惨状がある。宗教は説明原理として援用されているだけで、本質は、社会との関係がうまくいかないで孤立している人たちの存在にある。

結局、テロの発生をふせぐためには、さまざまなかたちで社会の中で居場所を見つけられる「社会的包摂」しかない。宗教が今日に存在する意義があるとすれば、異質なものでも許容し、受け入れる、共生の思想にしかないだろう。

結局、問題になっているのは、いつも集団と個人の関係である。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。