極めて巧妙に上演されている小池都知事劇場 – 植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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東京都の千代田区長選挙で小池百合子東京都知事が支援する無所属で現職の石川雅己氏が自民党が推薦する新人などを抑えて5選された。石川氏は75歳。

落選したのは、自民党推薦で無所属の与謝野信氏と同じく無所属の五十嵐朝青氏で、両名とも41歳だった。小池都知事が石川氏を支援する一方、元自民党議員の与謝野馨氏の甥にあたる与謝野信氏を都議会自民党のドンと言われる内田茂都議(77)が支援する選挙になった。

石川氏は多選と高齢という悪条件にもかかわらず当選を果たしたが、その最大の背景は、選挙が小池氏対内田氏の代理戦争と受け止められ、区民が内田氏ではなく石川氏の支援に回ったためである。

小池知事は都議会で都議会自民党を向こうに回し、自民党との連立与党を解消した公明党の支持を獲得。小池知事は、本年7月の都議選で、小池新党と公明党などの小池知事支持勢力による都議会過半数獲得を目指していると見られる。昨年の都知事選以来、東京都の政局は完全に小池氏の思惑通りに進展している。

小池氏は自民党東京都連とは独立に戦術を構築し、都知事選への勝負を挑み、圧勝という結果を獲得した。その政界遊泳術が極めて巧みであることは認めざるを得ない。

都知事選では安倍政権与党系の候補が2名出馬したのであるから、「安倍政治を許さない」勢力は、千載一遇の都政奪還のチャンスを迎えたが、このチャンスを生かし切れなかった。

メディアが全面的に小池支援に回ったことが選挙結果を大きく左右したことも見落とせない。

小池氏は五輪会場の見直し、築地の豊洲移転の見直し、などの行動を示してきた。その成果が十分にあがっているとは言えないが、それでも、都民の素朴な疑問や不満の声を掬い上げているとの感想を持つ都民は多いと思われる。

豊洲の水質汚染の程度が深刻であれば、築地の豊洲移転の可能性は低下し、小池知事が最終的に豊洲移転中止を判断する可能性がある。その際には、豊洲移転決定の中核人物である石原慎太郎元東京都知事に対する責任追及の動きが本格化する可能性が高い。小池知事がその方向で実績を上げれば、小池知事に対する支持はさらに上昇する可能性が高い。

7月の都議選で、小池新党と公明党が過半数議席を確保し、小池知事勢力が都議会の支配権を確立する可能性は高いと見られる。こうした変化は、一見すると、日本政治にある種の刷新をもたらすものとして国民の支持を得やすいだろうが、この変化のなかで進行する、重大な状況変化を決して見落とすわけにはいかない。

決定的に重要なことは以下の二点だ。

第一は、小池氏の基盤が自民党とほぼ同一であること、第二は、この変化の結果として、安倍政治に真正面から対峙する勢力の比率がさらに低下すること、である。

小池氏は「進退伺い」を自民党に提出したが、現時点で自民党籍を残している。自民Aと自民B程度の差しかない。自民党内の二つの派閥が、都議会を占有することになる、というのが現実に近い。都議会での会は存続すら難しくなる民進党までが、小池新党に一斉になびく状況が生じている。

これらの変化の背景に、日本政治の構造を書きなおそうとする「黒幕」が存在すると見るべきだ。狙いは、「二党独裁制」の樹立だ。自民Aと自民Bによる「二大政党体制」を構築することが目指されているのである。

旧来の自民Aに対して、自民Bは「維新政党風」の装いを凝らすのだ。現在の与党勢力に反発を感じる人々を、この「維新政党風」の「自民B」に吸い寄せる。この二大政党体制を構築できれば、既得権勢力は半永久的に安泰になる。

米国の共和・民主二大政党体制に近いものを日本に打ち立てる。この目標がくっきりと浮かび上がるのだ。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。