<自粛3ヶ月でテレビ復帰>ノンスタ井上は本当に嫌われ者なのか?


知久哲也[放送作家]

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お笑いコンビ「NON STYLE」の井上裕介氏は自身に陶酔する、いわゆるナルシストであると同時に、自他ともに認める「嫌われ者キャラ」として連日テレビを賑わせている。

そんな彼が謹慎期間3ヶ月半を経て、9日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)でスタジオ収録への復帰を果たした事で話題を集めた。

謹慎の発端は2016年12月11日午後11時45分頃、乗用車を運転中にタクシーを追い越そうとしたところ衝突、そのまま逃走したことが発覚した事によるもの。相手の運転手はねん挫をするなど、全治2週間のけがを負ったという。

事件は各メディアで「当て逃げ」事件として報じられて来たが、被害者が怪我をしていることから「ひき逃げ」事件であるとの見方もあるほどの重大事件だ。

一連の騒動を受けネットでは、

「復帰には反対しませんが、時期が少し早いと思います」

「何でだろう。益々嫌いになっていく」

「少なくても俺は認めてないし、どうでもいい」

など、否定的な意見が散見される一方で、

「復帰おめでとう。失敗くらい誰でもあるから、頑張れ井上!」

「(記者会見で)泣いていたのを思い出し、笑えない。でも、頑張って欲しい」

「これで終わりじゃないけど、素直に良かったと思います。頑張って下さい!」

といった応援する様な声も多数見受けられる。むしろ、筆者的には、復帰を応援する声の方が多いような印象すら覚えた。

出演した『ワイドナショー』でも井上氏に対して、「頑張れ!」などの直接的な応援メッセージは無かったものの、コメンテーターの松本人志氏が冗談で「運転手さん可哀想」「お前の事絶対許さへんからな!」などと発言。スタジオは爆笑に包まれ、いわゆる芸人的な応援をする形となった。

井上氏自身も良い形でテレビ番組への復帰を果たせたと言えよう。

しかしながら、同じ様な重大事件を犯してテレビ業界から消えたタレントは山の様にいるにも関わらず、なぜ彼はたった3ヶ月半という短い謹慎期間で復帰が出来たのであろうか?

筆者が考えるに、これには2つの大きな理由があると思われる。

1つ目は、「笑い」の力だ。

芸人は好感度を売りに仕事をしているわけではなく、基本的には面白いからテレビに出演出来るのである。つまり、いい人である必要も格好良くいる必要も無いのだ。仮にCMに10本以上も出演しているような好感度タレントが当て逃げ事件を起こしたとなると、そう簡単に復帰は出来ないだろう。

井上氏の職業がお笑い芸人だったことが不幸中の幸いであったと思うのだ。

お笑い芸人は「不幸を餌する」という特性を持っている職業である。例えば「人が目の前で転んだ、それをイジって笑いにする」「今日の漫才がスベッたから、明日それを自虐して笑いをとる」ように。そして、世の中的にもそれを許されているのがお笑い芸人という職業だ。芸人であることが世間からの不信感や批判を緩和させた理由の1つであるといえる。

2つ目の理由は、彼が本当は「嫌われ者」ではない、からだ。

ナルシストで嫌われ者のキャラクターでテレビや舞台を賑わしている井上氏。しかし、現在、裏方としてテレビ業界で働いている筆者の耳には彼の悪評は一度も届いていない。むしろ、「共演者だけでなく、スタッフにも気を配る」「後輩思いで優しい先輩」など、良い噂しか聞かない。

彼のキャラクターの中から見え隠れする人の良さが視聴者をはじめ、共演者やスタッフを魅了し、早期復帰を実現させたのではないだろうか。

だからこそ、筆者は3ヶ月後、「NON STYLE」が事件前と何も変わらずテレビで活躍していると、予想している。

なぜなら、彼は「嫌われ者」ではなく、「人気者」だからだ。
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知久哲也(ちく・てつや)放送作家。1985年、埼玉県川越市生まれ。2009年、大阪芸術大学芸術学部卒業。2010年、吉本総合芸能学院に入学し、芸人として活躍。その後、放送作家に転身。主な担当番組に「極限なぞなぞSHOW」「MXご自慢ライブ」「アニメちゃんに会える国」「あの年この歌〜時代が刻んだ名曲たち」など多数。