関空冠水・北海道地震・体操協会と日本の病理 -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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日本社会の歪んだ側面がさまざまなかたちで噴出している。

台風21号による冠水で機能不全に陥った関西空港。利用者は空港施設に取り残され、深夜まで空港島から脱出できない人が大量に発生した。

日本体操協会では18歳の選手が選手生命を賭けて記者会見を行い、協会の体質を告発したが、迅速な対応が示されない。

自民党の総裁選は自民党内の行事ではあるが、自民党の代表がそのまま日本の内閣総理大臣に就任することを踏まえれば、公共性を有する行事である。自然災害が相次いで発生し、候補者によるディベートが十分に行われなければ、新しい代表を選出するための情報が不足する。

総裁選日程を柔軟に変更するのが良識あるはずだが、権力を有する者が、自己の利益を優先して行動しているために、適正ではない対応が押し通されている。

日本社会の閉塞感の裏側には、日本の諸制度、諸機関の制度疲労、組織の腐敗と、その背景にある指導的立場にある者の倫理観の欠落が深く影響しているように思われる。

空港は社会的共通資本=公共財であるが、この公共施設の私物化を許していることによる重大な弊害が顕在化したと言える。体操協会には国民の税金が投入されている。そうであるなら、少数者による協会支配は排除される必要があるし、組織運営が少数者によって支配されることも、不透明になることも許されないはずだ。しかし、少数者による協会支配、組織運営の不透明性が浮かび上がっている。

西日本の豪雨災害、台風21号による災害、そして、北海道での地震発生による被害が立て続けに発生したが、安倍首相は、常に自分ファースト、総裁選ファーストの姿勢を示し続けている。西日本の豪雨災害の際には、気象庁が異例の記者会見まで行い、警戒を呼びかけ、すでに避難勧告などが提示されているなかで、安倍首相は「赤坂自民亭」なる飲み会に興じていた。国民の命と健康、そして暮らしを守ることなど、安倍氏にとって重要事項ではないのだろう。

北海道で激震が発生し、多数の死者が発生するとともに多数の人々が安否不明に陥り、北海道全道での停電が発生するという非常事態に直面しながら、総裁選日程の一時凍結すら判断しないのは、紛れもない自分ファーストの行動である。総裁選で石破茂氏と一対一の討論になれば、安倍氏に勝ち目はない。ディベートで撃破されることを恐れて、安倍氏は石破氏とのディベート機会を極力減少させようとしてきた。

自然災害で実質的なディベート機会が減少することは安倍氏にとっては大歓迎なのだ。本来は、総裁選日程を変更して、候補者の政見を有権者にしっかりと示すことが必要不可欠である。また、国民全体に対しても、首相選出の意味を持つ自民党総裁選の論争を広く開示することが必要だ。しかし、安倍氏は論争で敗北することが明白であるから、これから逃げる姿勢を示し続けている。

関西空港は事前の気象予測で非常に強い台風が関西空港を直撃することを十分に知っていたはずである。早期に空港閉鎖の措置を取るべきであった。高潮に対する警戒も気象庁がくどいほどに警告していたはずだ。関西空港は海上にある空港であり、これまで重大な地盤沈下の現実を確認してきているのであるから、高潮対策は必要不可欠なものであったはずだ。しかし、高潮対策が不十分であったために重大な冠水被害が生まれた。連絡橋へのタンカー衝突も、関西空港が台風直撃にもかかわらず、空港を閉鎖しなかったために、タンカーによる給油が必要で、その結果として発生した事故である。

すべては、民営化された関西空港が利潤至上主義の行動をとり続けていることによって生じた問題であると言える。

9月5日に空港島に取り残された利用者等が8000人存在したのであるから、あらゆる手を尽くして50人乗りのバスを160台調達すれば、8000人の人々を早期に脱出させることが可能であったはずだ。しかし、バスの調達が著しく遅れて、市民の脱出が深夜にまでずれ込んだ。民営化された空港が採算を優先した結果であると考えられる。空港という公共施設を収益至上主義の資本の手に委ねた結果として、さまざまな弊害が顕在化した。

すべての根底にあるのは「自己利益至上主義」である。「いまだけ、かねだけ、自分だけ」の「三だけ主義」の蔓延が日本社会をきわめて不安定で住みにくくしている。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。