台風一過・沖縄県知事選に最後まで力尽くす -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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台風24号が襲来した沖縄で県知事選が投票日を迎えた。台風による影響を避けるために、多数の主権者が期日前投票を行った。沖縄県選挙管理委員会は9月14日から29日までの16日間の知事選期日前投票者数が40万6984人であることを発表した。期日前投票数が過去最高だった2014年の前回知事選における19万7325人の約2.1倍になった。

9月12日現在の選挙人名簿登録者数は115万8569人で、期日前投票数は35.1%に相当する。3分の1以上の主権者が期日前投票を行ったことになる。台風は9月30日には沖縄地方を通過しており、9月30日午後には投票に重大な問題が生じない地域が多数を占めると考えられる。

選挙で勝利するには、最後の最後まで力を尽くすことが重要で、本日の投票締め切り時刻まで、力を抜かない対応が求められている。沖縄の未来を左右する重要な選挙であり、同時に日本の今後の政治にも重大な影響を与える可能性が高い選挙だ。姑息な利益誘導に左右されずに、的確な判断を示して欲しいと思う。台風を理由に、投票を繰り上げた市町村がある。天気予報を十分に精査すれば、9月30日には台風が沖縄県地方を通過していることは事前に予測できた。

投票日の繰り上げは「選挙妨害」の行為であり、繰り上げ投票を決定した判断の正当性が問われることになる。台風24号に次いで台風25号が発生した。NOAA(アメリカ海洋大気庁)は早い段階から台風25号が日本列島に接近するとの予測を示してきた。ECMWF(欧州中期予想センター)は台風25号が台湾から中国方向に進むとの予測を示しており、現時点では台風の進路予想が二つに割れているが、台風25号が台風24号に近い進路を辿り、日本列島に影響を与える可能性が残されており、今後の進路情報に十分な警戒が求められる。

沖縄県の人々にとって、何よりも重要なことは、まずは日々の暮らしであるだろう。これは沖縄県に限ることでない。人々にとって、何よりも大事なことは政治が自分たちの日々の暮らしに対してどう対応するのかである。そして、沖縄にはもうひとつ、基地という問題がある。第二次大戦で沖縄は日本政府、日本軍によって捨て石にされた。日本軍は本土決戦への時間かせぎのために沖縄を切り棄てた。

沖縄戦では20万人もの人命が犠牲になった。戦後、日本は1952年に独立を回復するが、この独立に際して沖縄を含む南西諸島は切り棄てられた。沖縄の犠牲の上に日本は独立を回復したのである。日本から切り棄てられた沖縄では、銃剣とブルドーザーによって土地が強制収容され、島全体が基地化された。日本への復帰後も沖縄の基地負担は軽減されていない。

いまなお、日本全体にある米軍施設の70%が沖縄県に集中している。この沖縄に日本の費用負担で、新しい基地が建設されようとしている。沖縄の最大の資源は「自然観光資源」であると言ってよいだろう。その自然観光資源を破壊する、美しい沿岸地帯を破壊する基地建設工事が強行されている。東アジアの地政学が変化し、米軍の編成が抜本的な変化を示すなかで、沖縄に新たな海兵隊基地を建造する必要性は消滅している。

日本政府が日本国民の利益を優先して判断、行動するならば、辺野古の米軍基地建設を中止するはずである。しかし、米国に何もものを言えない安倍内閣は、米国に日本の意向を表明することもせずに、沖縄の美しい海を破壊する米軍基地建設を強行している。その政府方針に対して、どのように対応するのかも、沖縄県知事選の重要争点である。沖縄には基地があり、基地関連ビジネスで生活を成り立たせている人が多数存在することは事実だ。

しかし、沖縄の未来のあり方を考える際に、基地問題を除外して考えることはできない。沖縄を世界有数の自然観光資源を活かす観光立県で発展させることを考えるなら、沖縄を「基地の島」でない存在として生まれ変わらせることが何よりも重要である。とりわけ、若い世代は次代の沖縄を担う存在として、未来に誤りのない沖縄の選択を、この知事選で示す必要があると思う。

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