<未来のドラマ製作者よ、これは見ておけ>鎌田敏夫・脚本「俺たちの旅」、向田邦子・脚本「時間ですよ」、山田太一・脚本「岸辺のアルバム」


貴島誠一郎[TBSテレビ制作局担当局長/ドラマプロデューサー]

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いわゆる映画人として、或いは映画ファンとして見ておくべき作品というものがある。

小津安二郎、黒澤明などを見ていないと会話に参加できない。映画の運転免許証みたいなものだ。また故・淀川長治や、未だ現役の白井佳夫などの洋邦画の語り部も多く、新たに映画を体系的に知る材料は多い。

一方、テレビドラマはどうか?テレビ独自の連続ドラマについてである。

私が初めて連ドラに接したのは「ウルトラQ」だ。実写ものというか、フィルムで撮ったテレビ映画というか。四方晴美と宮脇俊之の「チャコちゃんケンちゃん」シリーズや、当時アイドルだった岡崎友紀の「奥さまは18才」、実写特撮スポコンもの・桜木健一の「柔道一直線」やバレーボールの岡田可愛・中山麻理・笵文雀の「サインはV」、ボーリングの新藤恵美「美しきチャレンジャー」など、地獄車や魔球で、東京オリンピック以降のTBS30分ドラマは百花繚乱。

1966年から石原慎太郎原作の東宝青春学園ドラマ「青春とはなんだ」で夏木陽介が大ブレイク、1971年に森田健作が剣道部員の「おれは男だ!」、村野武範の「飛び出せ!青春」、中村雅俊の「俺たちの旅」で日本テレビの日曜20時枠ドラマはピークに達した。その後は夏目雅子の「西遊記」に引き継がれる。

「俺たちの旅」は鎌田敏夫の脚本で青春ドラマの名作の香りがするが、森田健作の「よしかわくーん!」とかいう演技や中味を、大河ドラマを見ているオトナや、おじさんの制作者はガキドラマ扱いしてたんだろうな。でも、九州の田舎者の中高生はテレビに釘付けだったし、上京したら井の頭公園や江ノ電に乗って由比ヶ浜や極楽寺駅に行ってみたいと思ったものだった。

一方、アメリカ・テレビ映画の「タイムトンネル」や「宇宙家族ロビンソン」、「謎の円盤UFO」も大ヒット。子供たちには「8時だョ!全員集合」以外にも熱狂するテレビドラマに溢れていた。

またこの頃、京塚昌子主演「肝っ玉かあさん」でスタジオ・ホームドラマ路線を確立した石井ふく子プロデューサーは人気絶頂・水前寺清子に一度は断られるも、音楽番組で来たTBSのトイレ前で待ち構えて口説き落とし、平岩弓枝脚本の木曜劇場「ありがとう」で視聴率56%を記録。

このエピソードは石井さんから直接聞きました。歌手が映画に出ることはあっても、テレビは音楽番組だけの時代。人気歌手が初めてテレビドラマに主演したエポックなドラマの放送開始は1970年、大阪で万国博覧会が開催された年です。

同じ年、久世光彦の水曜劇場は向田邦子脚本で「時間ですよ」をスタートさせ、「寺内貫太郎一家」などヒット連発。この時期、金曜ドラマの大山勝美は渡辺淳一原作・倉本聰脚本「白い影」や山田太一脚本「岸辺のアルバム」などの問題作を制作。磐石の日本テレビ「太陽に吠えろ」の裏で柳井満は小山内美江子脚本「3年B組金八先生」をスタートさせる。

日本テレビの名門枠・土曜グランド劇場は石坂浩二・浅丘ルリ子「2丁目3番地」から水谷豊「熱中時代」、西田敏行「池中玄太」に受け継がれた。水曜よる8時枠では石立鉄男・杉田かおるの名作「パパと呼ばないで」、バイブル的人気を誇る萩原健一・水谷豊の「傷だらけの天使」は土曜よる10時枠、殉職した刑事が主演する火曜よる9時枠では松田優作「探偵物語」も放送された。

1978年には19時~23時のプライムタイム週28時間のうち、TBSは半分にあたる14時間、日本テレビは12時間も連ドラを放送していた。まさに1970年代は監督を中心に据えた映画系制作会社のフィルムテレビ映画と、脚本家を中心にしVTRスタジオドラマの手法を確立した放送局制作の競作となって、第一次連続ドラマ黄金時代となった。

1981年にはTBS緑山スタジオが稼働開始、第一作となる山田太一脚本の「想いでづくり。」は、倉本聰脚本のフジテレビ「北の国から」と金曜よる10時ドラマとして表裏激突。大河ドラマは橋田壽賀子脚本「おんな太閤記」。作家としても脚光を浴びていた向田邦子がNHKで「あ、うん」を書いている最中、台湾の航空機墜落事故で死去したのもこの年の8月である。バラエティでは「オレたちひょうきん族」が放送開始。

1970年代の連続ドラマは最低でも半年、一年を越えるものもあり、膨大な時間数に及ぶのと、VTRテープの保存が悪く、全てを見ることが不可能である。それがテレビドラマの体系的な批評を難しくしている。本稿で取りあげた連ドラは仮免レベルの歴史で、この時期の民放の名作連ドラは田宮二郎「白い巨塔」や人気沸騰の時代劇「木枯し紋次郎」、「必殺仕掛人」などきら星のごとくあることを付け加えておきます。

それから敬省略、失礼致しました。いまだに現役で活躍されている先輩方が多く、そのエネルギーに畏れ入るばかりです。(貴島誠一郎[TBSテレビ制作局担当局長/ドラマプロデューサー])

 

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貴島誠一郎

貴島誠一郎(きじま・せいいちろう ) TBSテレビ制作局担当局長、ドラマプロデューサー 山一證券を経てTBSに入社、現職。1957年、鹿児島県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。貴島がプロデュースしたテレビドラマは、山口智子、常盤貴子、松嶋菜々子、矢田亜希子ら、多くの女優の出世作となっている。『ずっとあなたが好きだった』(1992年)『ダブル・キッチン』(1993年)、『スウィート・ホーム』(1994年)、『愛していると言ってくれ』(1995年)『官僚たちの夏』(2009年)、『LEADERS リーダーズ』(2014年)など多数。