<視聴率10%で誤差2.4%の調査は妥当か?>広告主も演者も視聴者も満足できるテレビ評価指標の開発を


貴島誠一郎[TBSテレビ制作局担当局長/ドラマプロデューサー]

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複数の番組で出演者同士が視聴率を話題にしていた。珍しいというか、演者が敢えてテレビのタブーに踏み込むコーナー企画。

演者は視聴率を気にしないようにしている。一喜一憂しない。視聴率が高いと「花」がきて、そうでもないと「花」がこないのはウザい。視聴率はスポンサーの広告効果の問題で、番組の評価ではない。視聴率ランキングが新聞に出ているが、読者や視聴者にとって必要な情報なのか? 視聴率がいい時にアピールし過ぎるテレビ局の自業自得…。

ごもっともである。

20年以上もテレビの第一線で活躍し、浮沈はあっても確固としたポジションを確立した演者たちの生の声だ。演者にも視聴率の扱いに苛立ちがある。テレビ局は「視聴率」に対抗する指標として、「視聴質」の提案をしたこともあったが、視聴率は関東地区600世帯の統計学的調査。スポーツでいえば100m競泳や競走のような記録競技である。

それに対して「視聴質」はフィギュアスケートやシンクロのような採点競技の趣である。しかも採点基準は曖昧で、技術点すら確立しない。

視聴率に対抗する評価基準を求めるなら、情緒的ではない調査による数値化しかない。ビデオリサーチ社の調査法は一応完成されているが、そのインフラを使わず年齢別・性別の調査をネットを活用して実施する手段はないだろうか?

必ずしも統計学的な日本の人口構成比率から数値化する必要はなく、ネットを利用しない世代は、ビデオリサーチ社の個人視聴率で類推してもよい。

スポンサーにとっては、求めるターゲットの好感度や支持率のようなデジタルな数値で技術点のような指標。テレビ局にとっては、世帯視聴率に縛られない内容とターゲットのリンクをアピールできるような数値で芸術点のような指標。複数の数値からターゲットの満足度を割り出すことはできないのだろうか。関係者のネット調査参加の扱いなど、客観的数値集計の課題はあるが、「数字には数字」を提示するべきである。

統計である視聴率には「誤差」がある。例えば、視聴率10%の場合は「±2.4%」もの誤差だ。この「視聴率」が唯一のテレビ調査の指標となっていることで、先進的な番組や優れた番組がどれだけ潰されてきたことか。

もちろんSNSのツイート数で視聴率とのリンクを模索する動きもあるし、録画視聴率も3ヶ月に一度公表されるようになった。しかし、広告主や演者も満足でき、テレビ番組が多様性を持ち、もっと幅広い視聴者に楽しんでもらえるような指標を、第三者のネット調査で開発できないものだろうか。

調査費用の負担先は、広告というビジネスモデルが崩壊しない限り、いくらでもあるように思う。

 

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貴島誠一郎

貴島誠一郎(きじま・せいいちろう ) TBSテレビ制作局担当局長、ドラマプロデューサー 山一證券を経てTBSに入社、現職。1957年、鹿児島県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。貴島がプロデュースしたテレビドラマは、山口智子、常盤貴子、松嶋菜々子、矢田亜希子ら、多くの女優の出世作となっている。『ずっとあなたが好きだった』(1992年)『ダブル・キッチン』(1993年)、『スウィート・ホーム』(1994年)、『愛していると言ってくれ』(1995年)『官僚たちの夏』(2009年)、『LEADERS リーダーズ』(2014年)など多数。