<エヴァからゴジラへ>庵野秀明監督が「日本版ゴジラ」で特撮文化への恩返し


岩崎未都里[学芸員・美術教諭]

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4月1日のエイプリルフール? と思うほど、日本の特撮映画にとって革命的なニュースが舞い込みました。

話題になっていた新作「ゴジラ」(2016)ですが、脚本・総監督を アニメ「エヴァンゲリオン」の庵野秀明氏。監督・特技監督(兼任)に平成ガメラシリーズや 「のぼうの城」の現代特撮マイスター監督の樋口真嗣氏が担当することが明らかになりました。撮影は今年秋からスタートし、公開は2016年夏予定。

1作目の「ゴジラ」(1954)が封切られてから61年。昨年のハリウッド版「GODZILLA」は63の国と地域で公開、全世界興行収入570億円以上、日本興収32億円を突破する大ヒットを記録するビッグビジネスです。

ちなみに 「ゴジラ」は「Longest continuously running movie franchise(最も長く継続しているフランチャイズ映画)」というカテゴリーで、ギネス世界記録に認定される世界的な「怪獣アイコン」となっています。

さて、気になる今回の「ジャパン・ゴジラ」はハリウッド版の108メートルを超える過去最大のサイズになり、その足型は各ネットニュースで公開されています。

「着ぐるみ特撮」なのか「CG」なのかは現在未定ですが、庵野秀明監督・樋口真嗣監督のお二人が組むからには「特撮」で撮るに間違いない、と筆者は予想します。

東宝も両監督の起用理由を、

「怪獣映画、ゴジラ映画に対する造詣の深さ、深い愛情。展覧会『館長 庵野秀明 特撮博物館』や『巨神兵東京に現わる』でのタッグ感。そして何より、常に新しいことをやり続けているおふたりであること。12年ぶりのジャパンゴジラにこれほど相応しい人はいない。」

と、コメントしています。

実はこの「巨神兵東京に現わる」は「特撮博物館」(2012・東京都現代美術館)で上映された特撮短編映画で、企画制作が庵野秀明氏、監督は樋口真嗣氏という作品。

「風の谷のナウシカ」に登場する世界を焼き尽くす人造生命兵器「巨神兵」が東京を火の海にする。溶けながら崩壊するビル、飛び散るガラス、火の海の東京をユラユラと歩く巨神兵。この全てをCGではなく、実写による特撮で表現されています。

特に注目は同時上映されていた「メイキングフィルム」。粘性のある液体を使ってビルが溶ける様子を表現したり、綿を使って爆発のきのこ雲を表現するなど、斬新で驚くような撮影技法が紹介されています。

撮影スタッフに昭和特撮を支えたベテランでを揃え、日本人らしい創意工夫の集大成と「ものづくり」の原点を見た思いでした。

さて、庵野秀明氏は、「ジャパン・ゴジラ」の製作を2013年にオファーを受けながらも、「シン・エヴァンゲリオン」(2015)制作の重圧から一旦は辞退したそうです。心中をご自身の会社「カラー」のHPで次のように述べています。

「空想科学映像再生の祈り、特撮博物館に込めた願い、思想を具現化してこそ先達の制作者や過去作品への恩返しであり、その意思と責任の完結である、という想いに至りました。」

特撮映画を見て幼少期を過ごし、学生時代は 「ウルトラマン」を卒制として主演・美術・音声・演出・監督までこなした庵野監督の特撮映画を愛する気持ちが伝わってきます。

もちろん、特撮スタッフに、久々にやりがいのある「現場」を提供するという責務を果たす為でもあるかもしれません。

「来年、最高で最悪の悪夢を皆様にお届けします。」

と挑発的なコメントが頼もしい樋口真嗣特技監督。

筆者としては1日も早く「最高で最悪の悪夢」をみて、うなされたいものです。

 

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岩崎未都里

岩崎未都里(いわさき・みどり) 11歳より芸能事務所所属。多摩美術大学美術学部映像学科卒。学芸員。英国留学やバックパッカーの経験を通して、32カ国を渡り歩く。その間、パニック障害を完治させた。SJS症候群により九死に一生を得て、現在は闘病しながら あらためて医療心理学を学んでいる。