サザンオールスターズが10年ぶりのアルバム「葡萄」をひっさげて「ミュージックステーション3時間SP」でテレビへの恩返し


貴島誠一郎[TBSテレビ制作局担当局長/ドラマプロデューサー]

***

サザンオールスターズは偉大だ。桑田佳祐は偉大だ。

4月3日の「ミュージックステーション3時間スペシャル」(テレビ朝日)を見て、改めてそう思いました。19時から始まった生番組の11組の出演アーティストのトリとして、サザンオールスターズが登場したのは2時間半後の21時30分。約15分のスペシャルメドレーとして「アロエ」「はっぴいえんど」「東京VICTORY」の3曲を披露、圧倒的な存在感を示しました。

筆者は歌番組の制作経験はありませんが、音合わせやカメラテスト、スタッフの食事休憩もあるので、トリといえども放送の3時間前のスタジオ入りのはずであろうと推察します。

生放送中も座り位置を変えながら、照明が熱を帯びる中で全てのお付き合い。歌の出番が来た時は、病も患った還暦直前の桑田さんは既にクタクタだったのではないかと想像します。ホームであるコンサートで歌いまくり動き回るよりも、発散できない分だけ待ち時間の疲労感があるはずです。

10年ぶりに発売されたサザンのアルバム「葡萄」は、TBSドラマ「流星ワゴン」の主題歌も収録され、CMタイアップなど鉄板の内容で、限定版は発売前から入手困難状態。わざわざ長時間拘束の歌番組でプロモーションする必要もない訳です。

もちろん司会はタモリさんだし、番組プロデューサーがガッチリフォローしていることもありますが、桑田さんの歌いぶりからすると、決してプロモーションではなく、コンサートに来れないファンのために、あえて疲労度の高い長時間生番組に出演したような印象を受けました。

1978年6月末発売のデビュー曲「勝手にシンドバッド」は発売当初チャート100位にも入らず低迷。8月末に人気歌番組「ザ・ベストテン」のスポットライトのコーナーに、生中継で新宿ロフトから衝撃のパフォーマンスで初出演を果たすと、11月に「ザ・ベストテン」の10位でスタジオ初登場、2ヶ月後のランクインに司会の黒柳徹子さんを喜ばせました。

テレビの歌番組への恩返し、との思いもあるのかもしれません。そんな義理堅さのある偉大なアーティストにして、あのサービス精神は凄すぎる。

筆者は松嶋菜々子さん主演「Sweet Season」(1998・TBS)の主題歌として、ドラマの内容に合わせて書き下ろしてもらった「LOVE AFFAR~秘密のデート」(1998)の打ち合わせの時に、

「僕は(音楽の)天才じゃないから、ただ(音楽が好きだから)人の三倍は努力するけどね」

と聞きました。桑田さんは努力する才能がある「努力の天才」なのかもしれませんが、そういう意味では「桑田佳祐は長嶋茂雄と同じだ」と思いました。

アーティストと呼ばれるよりは、バンドと呼ばれたい。学生時代から続くバンドの一員でありたいと謙虚な桑田さんは、自分の中の偉大なる才能と悪魔が闘い合っているのだと思います。

ますます綺麗になった原坊(ハラボーこと原由子)に、桑田さんの更なる偉大さを感じた3時間スペシャルでした。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

貴島誠一郎

貴島誠一郎(きじま・せいいちろう ) TBSテレビ制作局担当局長、ドラマプロデューサー 山一證券を経てTBSに入社、現職。1957年、鹿児島県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。貴島がプロデュースしたテレビドラマは、山口智子、常盤貴子、松嶋菜々子、矢田亜希子ら、多くの女優の出世作となっている。『ずっとあなたが好きだった』(1992年)『ダブル・キッチン』(1993年)、『スウィート・ホーム』(1994年)、『愛していると言ってくれ』(1995年)『官僚たちの夏』(2009年)、『LEADERS リーダーズ』(2014年)など多数。