<テレビ番組にある厳然たるカースト制>電通が儲かるスポーツ番組と最下層カーストの情報ワイド番組
高橋秀樹[放送作家]
かつてはテレビという四角い箱。現在は、ディスプレイという薄い板からでているテレビ番組は、ドラマ、報道、スポーツ、バラエティ、情報ワイドと5つに大別できる。テレビという装置から出てきている「テレビ番組」には、5つには厳然たるカーストがある。
最上層は、報道かドラマである。どちらが上か? 甲乙つけがたい存在だ。
報道には更に派閥がある。ニュース派に属するのは希釈乱舞の皆さん、政治家の番記者、社会部経済部外信部特派員、ジャーナリストを名乗る皆さんである。
ドキュメンタリー派は地方局に多い。東京のキー局でドキュメンタリー派であり続けるには孤高の精神力と変わり者で在り続けることと戦場が好きであることなどが求められるかもしれない、彼らをドキュメンタリストとよんでおこう。
もうひとつの派は番組派である。この人達はグルメ病や謎の生物病、デパ地下病、安売り病などに罹っているので他の派閥の人からは軽んじられる傾向にある。僕はこの病気を早くなおした方がいいと思うのだが、たいてい頑なで「相撲が始まっちゃたよ〜」などと時々叫んでいる。
報道局の人たちは、僕から見ると大きな2つの間違いを、今も改めずにいる。ひとつは有名タレントが入りさえすれば数字が取れると思っている所。
もうひとつはバラエティのディレクターは全員、演出ができると思っている所。バラエティ班にディレクターの応援を頼み、一番暇で使えないやつを押し付けられて演出を任せたりして大失敗することもよくある。
ドラマには芸術派と、視聴率派がいる。純文学と大衆文学に対比できるだろう。映画に劣等感を持っている人も多い。どちらの派も監督と呼んであげると、喜ぶ。
その下のカーストはスポーツ。スポーツだけはテレビの中にあって珍しく加工のない事実を伝えていると「思われている」事実は強い。ホントは面白い、スポーツイベントは視聴率を取る、巨額の金が動くので、それを取り仕切っている広告代理店である電通が儲かる。
その次のカーストはバラエティである。TV局の志望者は、大昔はドラマか報道だったが、30年前ころからはバラエティを志望する人も増えてきた。バラエティが主戦場であった僕は。志望者増について「バラエティは大した知識もいらずできそうだ」と、考えている人が増えているにすぎないと思う。
ここにも派閥があって、笑い、情報、クイズ、やらせ旅、トークなどに分かれる。
歌番組という分野もあってこれをバラエティに入れるかどうかは微妙なところだ。かつては「ザ・ベストテン」のような大ヒット番組があったが、CDが売れないように歌番組も視聴率がとれない。ジャンル自体が弱小化している。
ところで、バラエティの王道は笑いと歌。それをミックスしたテレビショウである。このジャンルは完全に消滅した。
テレビカーストの最下層は情報ワイドである。ここに集まるテレビ局員は報道出身、ドラマ出身、バラエティ出身と、揃い踏み。たまに非現場出身だけどどうしてもディレクターになってみたかった、などという人も混じる。
一方で純粋培養の情報ワイド出身という人もいるから、中は混沌である。
報道からは、ニュース素材を貸さないと、いじめられ、ドラマからは、宣伝したいドラマの3番手4番手の俳優の出演を押し付けられ、バラエティからはせっかく掴んだタレントのスキャンダルを放送しないように圧力をかけられ、立つ瀬がない。
僕は放送作家生活35年でドラマ以外のすべての番組に関わった。ドラマも関わったと見栄を張りたいところだが、僕が書いたのはドラマではなく、2時間の長いコントである。
ナゼそんなことができたかというと器用貧乏という言葉さえ当てはまらず、おそらくそれは何でも食い付くダボハゼだったからで、テレビという箱(や板)から出るものはどんなジャンルのものでも同じと考えていたからだろう。
だから僕の中では、テレビにはジャンルによるカーストなどないのである。
【あわせて読みたい】