「待機児童対策3000億円」は公務員人件費26.5兆円の1.2%分でまかなえる

政治経済

石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]
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安倍首相は、ホワイトデーの3月14日、参議院予算委員会の集中審議で、「待機児童ゼロを必ず実現させていく」と述べ、保育士の待遇改善策を取りまとめる考えを示した。
取り急ぎ必要な予算額は、年間3000億円とされている。これについて、安倍政権の本気度を測るバロメーターは、次の3つだ。

  1. 選挙前に公表される予定の『一億総活躍社会に関する最終報告書』で、保育向け追加予算額がしっかり明記されること
  2. 2016年度の分は、夏の参院選(又はダブル選?)の前に編成されるであろう2016年度補正予算で手当てされること
  3. 2017年度以降の分は、2017年度以降毎年度の概算要求で計上することを政府方針とすること

まず、2016年度の分だが、財源として国民理解を得やすいものとして、政治的に思いつかれやすいのは、やはり公務員人件費。
2016年度予算における公務員人件費は、国・地方合わせて26.5兆円。待機児童対策として必要な予算規模については諸説あるが、直近ニーズでは約3000億円程度とされており、これは公務員人件費の1.2%分となる。
 26.5兆円 × 1.2% ≒ 3000億円
少子化・高齢化への対策なのだから、子ども子育て財源は本来、年金・医療など高齢者向け予算からの転用で賄うべきもの。
しかし、年金・高齢者医療は、日本の政治における最大の利権の塊であり、そう易々と削減できないだろう。今までもそうだった。そして、憲法改正に向けた安倍政権の姿勢を始め、今後の政治情勢を俯瞰すれば、やはりそう思わざるを得ない。
筋論としては全くおかしな話ではあるのだが、取り急ぎは、公務員人件費の転用という、最も政治リスクが小さい安直な手法しかないだろう。
2017年度以降も、当初は公務員人件費のような政治的リスクの大きくない分野からの転用になっていく可能性がある。だが、あくまでも本筋は、年金・高齢者医療からの転用だ。
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