<パクリ問題なぜ急増?>パクリティラミス、中国マリオ、アリアナ・グランデ新曲…

社会・メディア

メディアゴン編集部

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今日、あらゆる分野で毎日のように「パクリ」の問題が話題になっている。

最近だけでも、中国共産党中央委員会が任天堂の「スーパーマリオ」に酷似したキャラクター動画を公式アカウントに掲載していたり、世界的ファッションデザイナーのKENZO創業者・高田賢三氏がパクリを指摘されたり(しかも、それを容認するような認識)、アリアナ・グランデの新曲「7 Rings」が複数のアーティストの楽曲に似ているといった指摘がされるなど、世界レベルでもパクリ話題には事欠かない。

他にも、ティラミス専門店「HERO’S」のキャラクターがシンガポール「ティラミスヒーロー」のキャラクターとの酷似が大きな問題になっているが、当の「ティラミスヒーロー」も他のイラストレーターからのパクリ指摘を受けるとそれを認めて謝罪するという状態。

とにかく、今、パクリ問題が急増している。

インターネット時代の今日、あらゆるコンテンツに対して、「パクリの有無」が検証されてしまう。従来であれば発覚しなかったような些細な情報源からのパクリでも、今日ではネット民たちの不屈の努力によって掘り当てられ、パクリの疑惑がかけられる。時にそれは被疑者の人生をも脅かしかねない。東京五輪エンブレム問題などはその代表的な事例だろう。

もちろん、ネット検索を駆使され、世界中から類似物を探されてしまえば、偶然の酷似であってもこじつけで「盗作」のレッテルを貼られてしまう場合もありうるだろう。そういったことも含めて今日ほど、パクリの指摘が容易な時代はない。作り手はそれだけリスクを負い、緊張感をもってコンテンツ作りに取り組もう、ということなのかもしれない。

何かとパクリ問題がニュースを賑わす今日、良いタイミングで発売されたのが、メディア学者である東洋大学教授の藤本貴之による『パクリの技法』オーム社(https://amzn.to/2SnkSp4)である。本書は、古今東西の具体的なパクリの事例をあげ、「パクリとはいったい何なのか?」について説明するだけでなく、その論点もわかりやすくまとめられている。この1月に48年ぶりに改正された著作権法にも1章を割くなど、とにかくパクリの議論を網羅している。タイトルだけ見るとパクリの方法をレクチャーする「脱法ノウハウ本」のように見えるが、決してはそうではないところも面白い。

本書を一読すると、私たちが「オリジナリティがある」とか「スゴいコンテンツ」と思っているものの多くにも、実はオリジナル(=パクリ元)があるということに気づかされる。もちろん、著者は、それを「悪いこと」とは捉えない。「人類の歴史はパクリの歴史」という立ち位置から、スタジオジブリ作品や「ジョジョの奇妙な冒険」から西遊記、果ては旧約聖書に至るまで様々な事例を通して、その是非を議論した上で、パクリとはクリエイティブを引き出すための技法(スキル)であるとし、具体的な技術やメソッドについて言及しており、参考になる。

「パクリ問題」がなぜ近年急増しているのか。その理由は簡単だ。悪質なパクリが発生し、それが発覚しているからである。バレなければ問題にはなっていないわけで、実に単純な話だ。つまり、インターネット以前であれば発覚しなかったパクリが、今では容易に発覚するようになっている、ということも要因の一つなのだ。

もちろん、原因はそれだけではない。本書によれば「パクリに関する不十分な知識」と「未熟なパクリの技術」がパクリを社会問題(時に犯罪)に変容させているのだという。パクリそのものは悪いことではない。しかし、それをどのようにやり、どう扱い、どう対応するのかが何よりも重要になる。高い技術と、正しい知識と処理に基づいて行われたパクリは、むしろ推奨すべきことですらある、というわけだ。

「パクリ問題」のニュースを、毎日どこかで必ずといって良いほど目にする今日。改めて考えてもみれば、パクリなどは昔からいたるところにあった。しかし、それが今日のような問題として大きな話題になってしまうことの最大の要因の一つが「未熟なパクリの技術」にある、という視点は目からウロコだ。

そういった観点から見てみれば、今、話題になっているパクリ問題の渦中にいる人たちは、確かに、いずれも幼稚な認識であったり、重大な対応ミス、処理間違いを起こしているものばかりであるように思える。

 

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