<ジャニーズ記者会見にNGリスト>八百長演出・主演の井ノ原快彦氏

エンタメ・芸能

植草一秀[経済評論家]

***

ジャニーズ事務所が滅亡に向けて着実に歩みを続けている。

10月2日の記者会見で滅亡の時期が一気に近づいた。会見で井ノ原快彦氏は次のように述べた。

「こういう会見の場は、全国に生放送で伝わっておりまして、小さな子供たち、自分にも子供がいます。ジャニーズJr.の子たちもいますし、被害者のみなさんが自分たちのことでこんなに揉めているのかというのは僕は見せたくないので、できる限りルールを守りながら、ルールを守っていく大人たちの姿をこの会見では見せていきたいと僕は思っていますので、どうか、どうか落ち着いてお願いします。」

しかし、会見にはNGリストが用意されていた。会見で質問者を指名する際、指名しない人物があらかじめ定められていた。顔写真入りのNGリストが準備され、質問から排除された。

他方、優先質問者リストも存在したと見られる。インナーサークルの質問者に優先的に質問をさせるという目論見。「やらせ会見」、「八百長会見」である。日本では八百長会見、やらせ会見がはびこっている。

政府主催のタウンミーティングでもあらかじめ「さくら質問者」が用意され、用意された質問が提示される。回答者は事前に準備した回答文を読み上げる。官邸での首相会見がひな形。事前に質問は提出が義務付けられ、提出された質問から質問者が事前に選定される。首相は官僚が事前に準備した回答文を読み上げる。これ以外の質問者への指名は、例外的に行われてもテレビ放映が打切られた後で実施される。

このような慣例が多く存在し、政府と癒着するジャニーズ事務所も踏襲したと見られる。ジャニーズ事務所は会見執行を依頼した外資系PR会社がしたことでジャニーズ事務所は関知していないと述べている。しかし、会見はジャニーズ社が実施したもの。

ジャニーズ社がどのような企業を使い、どのようなプロセスで会見を実施したのかは、あくまでもジャニーズ社の内輪の問題。会見の全責任を負うのはジャニーズ社である。

国が橋を架ける事業を実施したとする。完成した橋が不正工事で崩落したときに責任を負うのは国である。国と事業者との契約において国の側に瑕疵がなければ国が事業者を訴えることはできる。しかし、国が事前に事業者から橋の建設に関する詳細な情報を得ていたなら国の責任は免れない。

PR会社とジャニーズ事務所は事前に打ち合わせを実施している。その段階でNGリストの存在は把握されていた。

井ノ原氏がNGリストの質問者にも質問させるようにと述べたとジャニーズ社が主張している。PR会社は会見の後半で指名すると答えたと主張している。会見では司会者の進行に激しいクレームが提示された。NGリストの質問者を質問から排除したためである。

この時点で井ノ原氏は何が起きているのかを完全に把握したはずだ。NGリストの問題が表面化したことを認識したはずである。井ノ原氏がそう認識し、その方式ではダメだと判断したなら、井ノ原氏は声を挙げている人に質問をするよう、司会者に指示を示したはずだ。

ところが、井ノ原氏は声を挙げている人に対して「ルールを守れ」とのメッセージを発した。典型的なトーンポリシング。声を挙げることが正しいか間違っているかを判定する基準は、設定されたルールに正当性があるのかどうか。設定されたルールは「八百長ルール」。声を挙げることに正当性があったことは事後的に論争の余地がない。しかも、井ノ原氏は発言した時点で「八百長カラクリ」を完全に把握していた。

「八百長会見」の全責任はジャニーズ社側にある。その責任をPR会社に転嫁するための見解を表明したことが新しい驚き。新体制の東山紀之社長、井ノ原快彦副社長の引責辞任は不可避である。(植草一秀の『知られざる真実』

 

【あわせて読みたい】