放送事故レベルのサンジャポ劣化
植草一秀[経済評論家]
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TBSには「報道特集」のような優れた番組もあるが「サンデージャポン」のような低俗番組もある。視聴者は番組の特性を踏まえて接することが必要。
8月27日放送の「サンデージャポン」はNHKを上回る御用政府広報番組だった。
東電は処理後の放射能汚染水の海洋投棄を開始した。「トリチウム濃度が基準以下に薄められているから安全」というのが政府・東電の説明。諸外国でもトリチウムの海洋放出を行っており、国際比較上、日本の海洋投棄は問題にならないとする。他方、処理後放射能汚染水を海洋投棄するべきでないとの声は国内にも存在する。
その理由は何か。主たる理由を三つ挙げることができる。
第一は海洋投棄する放射性物質の総量が大きくなるとの問題。
第二は福島の汚染水はメルトダウンした燃料デブリに直接触れた汚染水を処理したもので海外の事例とは汚染水の種類が異なること。
第三はALPSで除去できない核種が存在することが明らかになっており、トリチウム以外の各種が完全に除去されているのかについての疑念が存在するなかで、検査データを監視可能な形態で完全公開すること求められているが東電がこれに応じていないこと。
東電が公表するトリチウム濃度は基準値以下とされるが、これ以外の問題がある。問題がないなら、そもそもタンクに貯めて貯蔵する必要はなかったはず。海外で放出しているトリチウム汚染水と違いがないなら、当初から海洋放出していたはず。海洋放出できずにタンクに貯蔵してきたこと自体が福島汚染水の「特殊性」を物語っている。
実際に、タンクに貯蔵されている水の7割近くに、トリチウム以外の放射性核種が排出濃度基準を上回って残存していると見られている。ヨウ素129、ストロンチウム90、ルテニウム106、テクネチウム99、セシウム137、プルトニウム239、炭素14、カドミウム113mなどが残存している。
認定特定非営利活動法人のFoE Japanが公表した「【Q&A】ALPS処理汚染水、押さえておきたい14のポイント」は、東電がソースターム(放出する放射性物質の種類と量)として示しているのは、3つのタンク群(合計3.6万m3)のみで、タンクの水全体の3%弱にすぎず、64の放射性物質(ALPS除去対象の62核種、トリチウム、炭素14)のデータがそろっているのは、この3つのタンク群だけだと指摘している。東電は、現在タンクにためられている水の7割弱で、トリチウム以外の62の放射性核種の濃度が全体として排出基準を上回っており、最大で基準の2万倍近くとなっていることが明らかになったと発表している。
東電は海洋投棄する前に二次処理を行い、これらの放射性核種も基準値以下にするとしているが、これらの説明に信ぴょう性を置けるのかが問題になる。2002年には東電が管内の原子力発電所のトラブル記録を意図的に改ざん、隠ぺいしていた事件が発覚した。原子炉等規制法では、自主点検でトラブルが見つかった時も程度に応じて国に報告するよう義務付けているが、東電はトラブル記録を意図的に改ざん、隠ぺいしていた。
改ざん、隠ぺいは、2000年7月に、東京電力の福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所の3発電所計13基の点検作業を行ったゼネラル・エレクトリック・インターナショナル社(GEI)のアメリカ人技術者が通商産業省(現経済産業省)に以下告発文書を実名で送ったことにより発覚した。東電は南直哉社長はじめ社長経験者5人の引責辞任に追い込まれた。2011年3月11日の原発事故では3月12日に原子炉メルトダウンの事実が明らかになりながら、この事実を長期間隠ぺいしたことも明らかにされている。
このような「改ざん・隠ぺい体質」を持つ企業がデータを監視可能なかたちで公開もせず、「トリチウム以外の各種を除去して海洋放出する」と主張しても市民の納得は得られない。処理後汚染水海洋投棄に反対する人々は、こうした事情を根拠として提示している。
放送法は第4条で、
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
と定めている。処理後汚染水海洋投棄の報道に際して、政府・東電の説明を報じることは不当でないが、これに反対する側の主張根拠を示さないことは放送法第4条違反である。
逆に、正当な批判をヒステリックに糾弾するホリエモン主張を繰り返し垂れ流すTBSの姿勢には開いた口がふさがらない。政府の提灯を持つ扇動者が戦前の不幸を招く一因になった。政府広報を鵜呑みにして中学校からやり直せと言う前に大学を卒業すべきと考える者が多い。
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