<ジャニーズ性加害問題>国連作業部会の救済要求に松野官房長官はスルー

社会・メディア

矩子幸平[ライター]

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7月4日、の国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会が故ジャニー喜多川氏の性加害問題についての声明を発表した。その中で、「ジャニーズ事務所の内部調査への疑義」や「メディアがもみ消しに加担」といったことだけでなく、「日本政府主体での被害者救済の必要性」についても言及された。その後、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の7名が記者会見も開かれ、ジャニー喜多川氏の性加害問題は次の段階に入ったと言える。

「ジャニーズ性加害問題当事者の会」副代表の石丸志門氏は、「被害者は1000人を超えている実感がある」「人類史上最悪の性虐待事件」とまで発言している。事実確認をしていう範囲で慎重に言及をしている国連作業部会ですら「被害者は数百人に及ぶ」としているので、この数はあながち大袈裟ではないように思う。

一方で7月7日に国連作業部会の会見に対し、松野博一官房長官は政府主体の救済や対応に「慎重な考え」を示したと各メディアが報じた。政府が「慎重な考え」という時、それは「政府はやりません」という意味であることは多い。

もちろん、個別の一企業に対して政府として踏み込むことに躊躇しがちであることは理解できるが、「政府として救済や調査に取り組んだり、国会議員が参加することに、何かやましいことでもあるのか?」と邪推した人も多いはずだ。特に、松野官房長官が「我が国に対して法的拘束力を有するものではない」と明言したことで、「何か裏があるのではないか?」と思った人は、筆者だけではあるまい。故人的には、なにか裏があるような気がする。

特に、日本政府は本年3月、「国会への不登院」を理由に参議院本会議は東谷義和こと「ガーシー」を賛成235、反対1で除名処分とし、国会議員を失職させたという実績がある。不道徳な事案にはやたら結束するのが国会議員であり、政府であるとさんざん印象付けたではないか。ガーシー氏と故ジャニー喜多川氏のどちらが、非道徳的なのか? どちらが罪が重いか? どちらが社会的・国際的に問題が大きいのか?

ここで政府に求められている「救済」とは、いうまでもなく、被害者への個別ケアや補償というだけにはとどまらない。現役のジャニーズの所属アイドルたちやジャニーズ出身のタレントたちがこれからも活動しやすくするために、余計な偏見を受けないようにすることも含まれるだろう。被害事実を調査して、ジャニーズ事務所に損害賠償をさせるとか、定期的な報告書を出させるとか、そういった表面的な次元の話だけではないだろう。そもそもジャニーズアイドルたちは、世界に誇る日本のコンテンツビジネスの宝であることも忘れてはならない。

「日本コンテンツの宝」を汚し、失わせないためにも、政府主体の調査や救済は必要だ。

 

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