新社会人に知ってもらいたいクレジットカードの罠

社会・メディア

保科省吾[コラムニスト]
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今更、こんなことを書くと「知っているよ」とお叱りを受けそうだが、これはクレジットカードを持ち始めた新人社員のために書いていると思って頂きたい。
現金を持たずに生活できるクレジットカードは大変便利だが,そこには大きな罠が潜んでいる。
筆者がはじめてクレジットカードに接したのは、1970年代に発行された、丸井のクレジットカード、いわゆる「赤いカード」である。一度に払わなくても月賦で欲しいものが手に入る。中野に住み、学生で金のなかった筆者は狂喜して、丸井中野本店に出掛けてこれを作った。
欲しいものは楽器と洋服。1万円を10回払いにすれば1000円ずつ払えばいいのだと思っていた。利子が付く借金だと言うことを理解していなかった。当事から既に丸井の払いが滞って学校に行かずにバイトに縛られている仲間が居た。
クレジットカードの罠で怖いのはこの月賦を借金だと認識しないことだ。
リボルビング払い、通称リボ払いは、毎月あらかじめ指定した一定額を返済してゆく方式である。 回数指定の分割払いが各々の件に個別に指定するものであるのに対し、リボ払いでは各々の件に対してではなく残高全体について毎月返済することによって合計残高を減らしてゆく。当然利子分も払わなければならない。端的に言ってこれも借金の別称である。
だから、預貯金に残高があるなら1回払いを選んだ方がいい。
【参考】<みんな慶応?>現代日本の新貴族層を描く「あのこは貴族」https://mediagong.jp/?p=21532
キャッシングというのも怖い。クレジットカードがあるなら現金は必要ないように思えるが、現金でなければどうしようもないことがある。代表選手はギャンブルである。クレジットでキャッシングして、ギャンブルをやる。
筆者はかつて、競艇場からの帰り道であるおじいさんから次のような至言を聞いた。

「競艇で負けても勝ってもそれでやめられるような奴は人間じゃない」

おじいさんは老舗の和菓子屋を飲み込まれていた。
クレジットカードを持つなら年会費無料の1枚で良い。1枚は欲しいのは、ないとアメリカではレンタカーさえ借りられないからだ。ゴールドカードなどのステータスは、見栄のことであるから不要だ。年会費を払ってまで見栄を張ることはない。
テレビドラマにもなった1992年上梓の宮部みゆきのミステリー『火車』(かしゃ)は「カードローン破産」を描いた小説。実に恐ろしい物語だ。『火車』、文字通り「ひのくるま」とはカードローン地獄のことである。
最近の若者は総じて物欲がなくなっていると言われるが、筆者にはそれはそれでよいことのように思える。物欲がなくなればGDPも伸びず、経済も低成長になるのが道理だが、経済の右肩上がりばかりが良いとは言えないような気もするからだ。
 
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