<TDL現役キャストが直言>意外?東京ディズニーリゾートの従業員不足が死亡事故の原因
三木大輔 (東京ディズニーリゾート・現役キャスト)
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2015年10月27日午前5時頃、東京ディズニーシーで勤務していた「ナイトカストーディアル」(パークの深夜清掃業務)の男性が亡くなった。
「ナイトカストーディアル」は日中に清掃業務をする「デイカストーディアル」とは違い、パーク閉園後に清掃するキャストのこと。「赤ちゃんがはいはいできる」くらい綺麗なパークを目指す、いわば東京ディズニーリゾートの縁の下の力持ちだ。
舞浜近辺や夜のパークの清掃業務は、株式会社オリエンタルランドの子会社などの複数の企業に委託されている。亡くなった男性キャストは東京ディズニーシーの担当が多い「株式会社舞浜ビルメンテナンス」(以下MBM)の配属であったという。
「ディズニーはキャスト志望者が多くバイトには困らない」とよく言われるものの、実際の東京ディズニーリゾートではキャスト志望者が年々減っている。慢性的な人手不足に陥っているためキャスト募集の面接会が頻繁に開催されている。
MBMでも特にナイトカストーディアルは人手不足が目立っており、デイキャストからの引き抜き募集も行われていたほどだ。
ディズニーテーマパークには、Safety(安全)、Courtesy(礼儀正しさ)、Show(ショー)、Efficiency(効率)の頭文字からとった「SCSE」(註)という従業員の行動基準がある。これは、どの部署に配属されても、キャスト全員がゲスト(来場客)に最高のおもてなしを提供するためにとる判断や行動の優先順位を示すものだ。頭文字の並びがそのまま優先順位の順番になっている。つまり「安全」が最も優先されている事項なのである。
しかし、最近の人手不足によって、本来、一番最優先にしなければならないのが「安全」が軽視され、「効率」が優先されてしまっているのが現状だ。その為、ナイトカストーディアルは一つのテーマエリアにつき「片手で数えられるぐらいの人数」が、決められた持ち場に行き、担当箇所の清掃を一人で行っている。
大げさに言ってしまえば30人で東京ディズニーシー全体を清掃しているようなものだ。広大なディズニーのテーマパークを考えれば、到底簡単にこなせる話ではない。この無理な運営が、結果として1983年の東京ディズニーランド開園以来、初となる死亡事故につながったといえよう。
中でも、消防車に積まれるような大きなホースを利用し放水して清掃するという「ホージング」は、とても体力のいる清掃方法で、成人男性でもひと苦労する作業だ。亡くなったキャスト男性の勤務年数は決して短くはなかったそうだが、これまでハーバー上での事故がなかったことのほうがむしろ不思議なくらいだ。
重たいホースや脚立等、怪我の原因になりそうな道具を、2人1組のペアで使用していれば早期の発見や事故が免れたかもしれないと思うと、現役キャストの一人として悔やみきれない。今後はディズニーを愛して働くキャストの安全を考えた労働環境にいち早く変わることを心から願う。
[註]http://www.olc.co.jp/csr/safety/scse.html
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