<手書きアイデアも市が清書>鶴ヶ島市「東京五輪公式エンブレム原案」の公募開始で100%誰でも応募が可能に
メディアゴン報道部
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新たに公募が開始される「2020年・東京五輪エンブレム」のデザイン。組織委員会では、11月24日から12月7日の応募期間を設け、年内での絞り込みと、来春の発表を目指す。
そんな中、東京五輪でのゴルフ競技会場の候補地として予定されている「霞ヶ関カンツリークラブ」に隣接し、選手・関係者の移動ルートにもなる埼玉県・鶴ヶ島市では、組織委員会でのエンブレム公募に先立ち、「自主予選」とも言える「東京五輪公式エンブレム原案」の公募に踏み切ったことが話題だ。
鶴ヶ島市によれば、今回の東京五輪のゴルフ会場を契機として、市民のスポーツ・文化・産業振興を応援するための企画。鶴ヶ島市のスポーツ振興の公式エンブレムと「東京五輪公式エンブレム」に応募するための「原案」という2つの公募だ。(http://www.city.tsurugashima.lg.jp/page/page003261.html)
原案は、本家の公募では認められていない「手書き」での応募を受け付ける。優秀作を「原案」として選抜し、それを鶴ヶ島市とプロのデザイナーが調整・清書などを施して、鶴ヶ島市長を代表者としてエントリーする。もちろん、応募者の原案者としての地位などについては保持されるという。
公募発表に先立ち、一部報道では「組織委員会から『待った!』が入った」などがとりだたされたが、市の広報担当者は次のように述べる。
「鶴ヶ島市の五輪応援エンブレムと『五輪エンブレム原案』の公募に際し、市の担当者に大会ブランド保護基準の説明を組織委員会から受けた。一部では『呼び出された』とか『中止になった』などと報道されているがそうではない。応募要領で使った『東京2020』という文言が、登録商標なので利用できないため、その部分は変更した。東京五輪公式エンブレム原案の募集も予定どおり進めている。全国から多くの応募を期待したい」(同市・市政情報課)
組織委員会が実施している「東京五輪エンブレム公募」に鶴ヶ島市の「予選」を経由して応募するという形式だが、「本家」との最大の違いは、手書きでも応募が可能ということだ。
コンピュータなどが利用できない小さい子供や年配者、アイデアはあるけど技術的に困難を伴う人たちへの応募の可能性を開いた点がポイントといえよう。
今回の企画は、鶴ヶ島市の広報事業のアドバイザーと務める東洋大学・藤本貴之准教授(39)が全面的なプロデュースを担当。藤本准教授は、これまでの五輪エンブレム騒動では専門家の見地からメディアで様々に発言。鶴ヶ島市エンブレム公募では、本家の五輪エンブレム公募の欠陥部分を補うような形式を採用している。
藤本准教授は、鶴ヶ島市「東京五輪公式エンブレム原案」企画について次のように述べる。
「一連の『五輪エンブレム騒動』があり、東京オリンピックに対して、国民全体が『後ろ向き』になってしまった。デザイン業界、デザイナーへの悪印象も致命的だ。しかし、オリンピックとは、世界中の人たちが楽しんで参加できることが基本。エンブレムやデザイン選びであっても、誰でもが参加できる、楽しめる、愛されることが本来だ。オリンピックを本来の形に戻すためにも『100%誰でも参加できる自主的な地域予選』のようなイベントを開催し、市民レベルからオリンピックを盛り上げたいと思った。良いアイデアであれば採用して、こちらで清書して「五輪エンブレムの本戦」に応募する、という形式。これによって、ほぼ100%誰でもが五輪エンブレムに挑戦できるようになったと思う。」(藤本貴之氏・東洋大准教授)
鶴ヶ島市・藤縄善朗市長(63)は、今回の企画に対し、オリンピックの意義を再認識しつつ、地方の「まちおこし」や市民参加を組み合わせた新しい形の地域振興・地域PRとして、その可能性に意気込む。
「『東京オリンピック公式エンブレム原案、パラリンピック公式エンブレム原案』は、市民が組織委員会に応募することを妨げるものではないが、市が必要に応じて技術的な清書等をし、鶴ヶ島市が、公募原案から作成した作品を組織委員会によるエンブレムのデザイン募集に応募する。オリンピックは参加することに意義がある。アスリートだけでなく、一般市民の皆さまにも、エンブレム制定や応援する形で参加していただき、まちおこしにつなげていきたい。」(藤縄善朗氏・鶴ヶ島市長)
鶴ヶ島市による五輪エンブレム原案の公募期間は11月16日まで。鶴ヶ島市以外からの応募も可能だ。「本戦」の公募がスタートする一週間に締め切り、選抜された作品が調整や清書をされ、市の公式デザイン案として応募されることになる。
エンブレムのアイデアは持っているが、デザインスキルに自信がない人にも開かれた応募のチャンス。積極的に利用してはいかがか。
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