「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は映画自体がレプリカである残念感

映画・舞台・音楽

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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1977年5月に全米公開された映画「スター・ウォーズ」の第1作。あれから38年経っての第7作「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の公開である。
38年は、ほぼ筆者のテレビ屋人生と重なる。だからといって重なる以上の何かがあるわけではないところが情けない。
オープニングの宇宙空間を上方彼方に飛び去っていくスーパーテロップの出し方は、よくギャグにした。ここで物語の発端のストーリーを描いて最後に「主演・高倉健な訳はないだろ」みたいな奴である。
TPPが発効後は著作権犯罪は親告罪ではなくなるからこんなギャグをやっているのが見つかったら捕まるのだろうか。いや、今でもルーカスフィルムはウォルト・ディズニー・カンパニーに買収されてしまった訳だから、そういうことにはとにかく寛容ではないネズミの国に叱られるのだろうか。
結構高かったけどインダストリアル・ライト&マジック(Industrial Light & Magic=ILM)の特殊効果のやり方を書いた本も買った。ILMは、ジョージ・ルーカスが設立したVFXのスタジオで、ルーカスフィルムの持ち物だった。
実写映像と背景画を合成する技術、マットペイント(matte paint)のことなどもこの本で知ってこれもギャグにした。マットペイントを下手な看板屋が描くギャグである。
この本はアマゾンで調べたら1万800円もするではないか、今度古本屋に売ろうかと思う。
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の大人チケットが2000円に値上げである。渋谷の東宝シネマはネット予約も前日解禁。すぐ席が埋まる。監督はJ・J・エイブラムス。ルーカスはいなくなってしまった。
当初の「スター・ウォーズ」は批評家にはぼろぼろに貶されたけど、当時若かった筆者たちは熱中した。こういう描き方を叙事詩的というのだと知った。
叙事詩といえば「オデュッセイア(オデッセイア)」だとも知った。作品には熱中したけれどなんだかおもちゃ屋で高いグッズ、つまりレプリカを売っているのに鼻白んだ。「スター・ウォーズ」はレプリカ(複製品、模造品)を売ってビジネスにすることの初めとなった映画ではないか。
ところで、今回の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」はルーカス無く、それは志なく、叙事詩でもない。

「昔、僕たちが熱中して見た映画スター・ウォーズ自体のレプリカに過ぎなかった」

ここでレプリカは勿論、模造品と言う意味で使っている。
今回もあの独特の編み込み髪で登場したレイア姫役のキャリー・フィッシャー。ばあさんになった今の方が美人なのが、なんだか、もの悲しい。
 
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