<映画『超高速 参勤交代』を観て>佐々木蔵之助と陣内孝則・寺脇康文にある「役者としての差」

映画・舞台・音楽

メディアゴン編集部

 
予告編だけ見て期待していた。『アナと雪の女王』に次ぐ、2位の観客動員だと聞き、期待は高まった。「日本でもちゃんと笑いの映画が出来て、客もくるんだ」「おめでとう」と。
・・・で、見に行ったところ、予想に反して客は中高年の20人ほど。
冒頭は脳性麻痺の異優、神戸浩のナレーションで始まる。藩内の百姓をも演じる神戸だが、神戸をこういう使い方をしてはだめである。おもしろいことを演じるのに面白そうなナレーションをしてはいけない。神戸にそういう演出をして、こうなったのか、神戸が、そういう読み方しか出来なかったのか、どちらかはわからないが、結果面白そうなナレーションになってしまったのなら、監督の責任である。
キャスティングでも、2人のミス・キャスティングがある。幕府の悪徳老中役の陣内孝則、藩士役の寺脇康文。
この二人は、普通の芝居のときはよいのだが、コメディだとその演技をしなければならないと勘違いしているために、面白そうなオーバー・アクションをする。普通なら、そんなオーバーアクションのやつは存在しない。普通に演じるからおもしろいことは、おもしろいのだ。
「五日以内に参勤せよ」という東北の小藩、湯長谷藩に下された幕府の無理難題。そのロードムービーだから、ギャグはもっとたくさん入るだろう。ギャグの数が少ない。最も大きなギャグである、参勤交代の中元の数をごまかすギャグも、俯瞰ショットで取ったのでは台無し。目付けの役人が居る宿場が、あんなに小さいはずがない。
ギャグは嘘が見えるとしらける。
映画の総尺が長い。最後の市川猿之助演じる徳川吉宗と、佐々木蔵之助演じる湯長谷藩主とのシーンは要らない。要らない上に「民百姓が大事」としていた佐々木蔵之助の思いまで否定されている。
残念。救いは、佐々木蔵之助の芝居がよいことだ。『間宮兄弟』以来のすばらしさである。
 
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