野党・民進党には森友事案解明の意思があるのか – 植草一秀
植草一秀[経済評論家]
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今年度こそ、日本政治の刷新を実現しなければならない。
安倍首相がせっかく、
「私や妻が関係していたということになれば、まさにこれは、もう私は総理大臣も、そりゃもう、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきりと申し上げておきたい」
と明言し、安倍昭恵氏が森友学園の土地取得問題に深く関与しているとの事実が判明したのであるから、野党は安倍昭恵氏の国会証人喚問を求めて、安倍昭恵氏に事実関係を質すべきである。
安倍昭恵氏が事実に基づいて証言すれば、恐らく、安倍首相は辞任せざるを得なくなるだろう。
このような状況が生まれているにもかかわらず、野党の姿勢は極めてあいまいである。とりわけ野党第一党の民進党の姿勢があいまいである。この機会に安倍昭恵氏の証人喚問を実現できないなら、民進党には消滅してもらうほかに道はない。
安倍首相は正々堂々と生きるより、ただひたすら権力の椅子にしがみつくという、さもしい道を選んでいると見られるから、国会での堂々とした説明など求めようもない。このような現実がある以上、野党が不退転の決意で真相を明らかにしようとしないなら、目の前に巨大な不正があろうとも、その不正を正すことはできない。
野党の「不作為の罪」は計り知れなく大きい。
森友事案は、安倍首相夫人が深く関与しているということを背景に、国有財産が著しく低い価格で民間事業者に払い下げられた事案であり、財政法第9条に反する法令違反事案である疑いが極めて濃厚である。
国有財産を適正な対価なくして譲渡したのは財務省であり、財務省の法令違反が厳しく問われなければならない。そして、この法令違反行為が行われた主因は、内閣総理大臣夫人の関与にあると考えられる。
政治腐敗、政治私物化の典型事例であり、極めて重大な事案である。単に8億円の損失が国民に与えられた以上の重大性がある。これこそが、現代日本政治の歪みそのものなのである。
政治活動の根幹は財政活動である。
財政活動とは予算配分そのものであるが、政治的な利害で予算配分が歪められる。社会保障支出が冷酷に削減されて、利権支出だけが膨張する。その理由は、社会保障支出の支出先が与党支持者でなく、利権支出の支出先が与党支持者であるからだ。
これが政治の私物化、政治腐敗の基本構図である。
森友事案は、首相夫人関与の案件であるから、財務省が法令を駆使=悪用して森友学園に激安価格で国有地を払い下げたものであり、財務省の行為が国民に対する「背任」にあたるとの市民の訴えは正鵠を射ている。この事案を国会が適正に追及できないなら、国会は存在意義を失っていると言っても過言ではない。
さて、沖縄では、辺野古米軍基地建設が着実に進行している。
辺野古米軍基地建設が着実に進行している主因は、沖縄県が辺野古米軍基地建設本体工事の事前協議書を受理したためである。沖縄県の翁長知事は、2014年11月の知事選で当選し、12月に知事に就任した。翁長知事は知事就任後、直ちに埋立承認の取消に進むべきだった。
国はこれを違法だと訴えるだろう。法廷闘争を経て、行政権力の番人と化している裁判所が、国勝訴の判決を示すことは想像に難くない。最高裁が国勝訴の判断を示したなら、間髪を入れずに、今度は埋立承認撤回の判断を示す。これに対しても国が法廷闘争に持ち込むことが想定される。
これも織り込み済みである。
しかし、埋立承認の撤回の根拠が、沖縄県民の判断ということになると、裁判所といえども、これを否定することは容易ではない。
このようなプロセスで、
「あらゆる手法を駆使して辺野古米軍基地建設を阻止する」
ことが求められてきたわけだが、現実は大きく異なっている。翁長知事の対応があまりにも遅く、そのために、辺野古米軍基地建設が着実に、そして大幅に進展してきたのが現実なのである。
その翁長知事が、ようやく「埋立承認撤回」を改めて明言した。沖縄の地方紙はこの発言を歓迎しているが、辺野古米軍基地建設阻止に向けての意思はまったく伝わってこない。
辺野古米軍基地建設を阻止するための最速、最大の行動が示されてこなかったことに対する冷静な評価が欠けているからである。ものごとを本当に達成しようとするためには、「本気の対応」が必要不可欠である。
「本気の対応」がなければ、ものごとは成就しない。単なるパフォーマンスに終わってしまう。
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