#黒川問題予算委集中審議を求めます -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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コロナ感染拡大が一段落して緊急事態宣言が解除される。

「これで行動抑制は必要なし」と人々が判断すれば、再び感染が拡大する恐れは消えていない。ゴールデンウイークは行動抑制が徹底された。しかし、ゴールデンウイーク明けは通勤も再開されているから、人と人の接触は拡大したと見られる。行動抑制が消滅すれば人と人の接触が急拡大する可能性もある。しかし、その影響が感染者数の増加として表れるのは2週間先になるから予断を許さない。

5月25日には緊急事態宣言の全面的な解除が決定されるから首相記者会見が行われる可能性が高いが、安倍首相はコロナ以外の問題について見解を示す必要に迫られる。官邸での首相会見の進行を務めるのは長谷川栄一氏。長谷川氏の進行が偏向し切っている。

首相記者会見が単なる学芸会であることが明らかにされている。事前に質問が提出され、首相の答弁も事前に官僚によって用意されていることを安倍首相自身が認めたからだ。

安倍首相の発言原稿はプロンプターと呼ばれる透明のアクリル板に映し出される。安倍首相は官僚が書いた原稿を読み上げるだけ。LeaderではなくReaderだが、漢字によみがながないと正しく読めないからReaderも務まらない。質疑応答も、事前に質問が提出されて、官僚が答弁を用意している。用意された原稿を読むだけなのだ。あまりにも批判が強まり、最近になって、一部、事前通告のない質問を少数受け付けるようになったが、安倍首相がまともに答弁できないため、極力、自由質疑の部分が少なくなるように運営されている。

NHKは自由質疑に移る前に中継を終了して、安倍万歳の岩田明子記者が首相礼賛の解説を付す。大本営あるいは台本営と呼ばれている。自由質疑でも厳しく追及する可能性の高い記者は指名されない。どのような質問が出ても、自分の言葉で適切に説明する能力を持たないから、このような「やらせ会見」が横行する。

5月25日の会見が注目されるが、首相が回答しなければならない問題は黒川問題だ。三つの問題が残っている。

第一は、黒川氏の違法勤務延長閣議決定の取り扱い。

第二は、黒川氏に対する懲戒処分問題。

第三は、賭博罪、常習賭博罪が明らかになった犯罪事案の捜査方針。

いずれも重大な問題で、日本の主権者は安倍内閣の対応を批判している。黒川氏に対して国家公務員法に基づく懲戒処分は行われなかった。懲戒処分ではない単なる注意に過ぎない「訓告」となった。この処分決定について安倍首相は国会で「検事総長が事案の内容など、諸般の事情を考慮し、適切に処分を行ったと承知している」と繰り返したが、これが虚偽答弁であった疑いが浮上した。

共同通信が5月25日、「黒川氏処分、首相官邸が実質決定 法務省は懲戒と判断、軽い訓告に」と伝えた。共同通信記事は、「賭けマージャンで辞職した黒川弘務前東京高検検事長(63)の処分を巡り、事実関係を調査し、首相官邸に報告した法務省は、国家公務員法に基づく懲戒が相当と判断していたが、官邸が懲戒にはしないと結論付け、法務省の内規に基づく「訓告」となったことが24日、分かった。」と伝えた。

国会における安倍首相答弁が虚偽である疑いが浮上した。野党は国対委員長会談を開き、安倍首相の虚偽答弁疑惑を徹底追及する方針を決めた。コロナ問題が一服しているいま、国会は本来の責務を果たすべきだ。黒川氏問題で予算委員会の集中審議開催を求めるべきだ。現職の東京高検検事長による犯罪疑惑である。もみ消して良いわけがない。

法務省官僚が「テンピンなのでレートが高いとは言えず、懲戒処分を行わなかった」ことを述べたが、この方針を確定するなら、刑法第185条および第186条に「テンピンは合法」と明記するべきだ。安倍内閣が黒川氏処分で違法な対応を示したことにより、この問題は長期化することが決定的になった。

 

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