<チームラボ・国内最大規模の展覧会>「踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」は共創の思想への転換点だ

デジタル・IT

齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]
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現在、東京・お台場にある日本科学未来館で開催中の「踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」展は、おそらく国内で最大規模のチームラボの展覧会である。
2つのタイトルが示すように、内部は新作を含む、いわゆる「デジタルアート」の部と、子供も楽しめる教育プログラム的な意味合いを持つ「未来の遊園地の部」から成り立っている。
混雑しているとは聞いていたが、会期最後の8日間は連休にも重なるため整理券を配布し、並んで待たなくてもよくなったとのこと。入場券を購入し整理券をもらい、入場時間まで、まずは別会場の「Floating Flower Garden – 花と我と同根、庭と我と一体」を見に行く。
これは、天井から欄の花をつるしたフラワーガーデンのような会場で、足元に照射された赤外線が人を感知して、その移動にあわせて花がもち上がり、まるで自然に花々が道をあけドーム型に自分の周りを包み込んでくれるような仕掛けとなっている。
残念ながら一度に4人程度しか中にはいれず、1組2分半ほどしか滞在できない時間制限がある。センサーに連動した花の動きはゆっくりで、もっとゆったりとこの雰囲気を味わえればよいのだが・・・
1時間待ちの行列を思うとそうもいってはいられない。とはいえ、3面の壁を鏡で覆い、花の庭は実際よりはるかに広く見える。生花だけに会期中なんどか取り替えるのだろうな・・などと余計な心配をしながらメイン会場へ。
メイン会場は2部制になっており、入場してはじめは独特のデジタルアートが続く。インタラクティブな映像コンテンツは若冲の絵画だったり東京に咲く花々だったり、流れてくる漢字に触ると絵に変換される映像作品だったり。
3次元を2次元の平面に落とし込んだ映像は延々と変化し続ける花鳥を映像化した、うつろいゆく季節を描く現代の掛け軸だ。
また光の八咫烏がロケットのような軌跡を描き、音楽にのって飛び回る迫力ある映像作品はアニメーション的手法、正しくはないが迫力を最大にするデフォルメで描かれる。
この作品群のキャプションによると、つまるところ近代以前の日本人の空間認識は、近代の遠近法などとは異なっており、その空間認識から日本人の感性も違っていたのではないかという意見が開陳されている。近代的合理主義と相性が悪くて捨てられてしまったこれらの感性の中に、次の時代のヒントがかくされているのではないか、ということだ。
日本画の独自の平面性を、日本的なカルチャーの特性に絡めて「スーパーフラット」という概念でくくったのは現代美術作家の村上隆だが、それとはまた別のアプローチとして興味深い。
詳細はチームラボのホームページにあるので、そちらを参照してもらうとして、かいつまんで言えば「自己と他者、自己と世界が対立的で、対象を客観的に観察するのが近代西欧的な見方だとすると、近代以前の日本画の空間認識は、自己と自然・自己と世界が混然として、世界(自然)の中に自己があるという認識なのである」ということだろうか。
ここから2部の「未来の遊園地」ゾーンのテーマである、共に作る「共創」のコンセプトへとつながってゆく。
様々な技能や才能を持つ人間の集まりであるチームラボのように、展覧会場に集まった人々自身が参加して同様に集まった他者とともにコンテンツを作り上げ、提供し、それが用意された大きなデジタルのキャンバスの中で動き回り新しい街を作りだす。
2部は、大きなひとつの展示会場にさまざまなデジタルの仕掛けのある参加型の作品がならぶ遊園地である。ひとつ2つでも十分魅力的なコンテンツがこれだけ集まると子供だけではなく大人もワクワクしながらあれこれと参加できる。
この会場はすべて体験型のゾーン。色違いのブロックの中から同じ色のブロックを用意されたテーブルの2か所におくと、レールや道路がつながってゆき乗り物が走り出すインタラクティブな映像作品は壁の大画面でも随時変化し生成してゆく道路や線路と乗り物を見ることができる。
塗り絵を作って持っていくとその場でスキャンされ、そこから立体の展開図が作られて、あらかじめレンダリングされた立体の宇宙船やら飛行機やら自動車になって、映像の中を動き回る作品。そして映像の中に生まれ落ちてくる象形文字に触ると、そこから文字の意味である動物が飛び出す作品などなど。
どれもかなり高度なテクノロジーや情報技術の成果が使われているのだろうが、そんなかつてのハイテクノロジーアートのような難解さはかけらもなく、一緒に誰もが楽しめてワクワクする作品ばかりである。
展覧会を見終わって、ああ面白かったという感想とは別に、チームラボの提唱する共創の思想について深々と考え込む。近代が希求してきた拡大主義や自然を支配すること、競争主義の世界から、自然の中にあるヒトとして共創していく思想への転換点。
3.11以降、漠然と人々が感じてきた、今までのやり方からの転換、というものへの一つの答えを、ここに見る思いがする。
とはいえ、その転換は、まだはじまったばかりであり、かつ与えられるのを待つばかりではない、「ともにつくる」ことを促されてもいるのだ。ワクワクする未来への、扉。そんな気になる展覧会は本当に初めてである。(日本科学未来館にて5月10日まで開催中)
 
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