<コレジャナイ>東京五輪公式アニメグッズの絶望的なダサさ


藤本貴之[東洋大学 准教授・博士(学術)/メディア学者]

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2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの公式グッズの販売が先月6月から始まっている。今後、続々と公式ライセンス商品が登場することになる。

そして7月3日、日本の人気アニメを用いた公式ライセンス商品が発表された。7月16日から一般販売が始まるという。発表された公式商品は、日本を代表する人気アニメのキャラクターをあしらったTシャツ、トートバッグ、ウチワなどだ。

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(毎日新聞2016年7月3日より引用)

 

「鉄腕アトム、セーラームーン、クレヨンしんちゃん、ワンピース、妖怪ウォッチ、ナルト、ドラゴンボール、プリキュア」といった、いわゆる主役ラインナップ。

日本らしさをアピールするために、アニメや漫画といった「オタクコンテンツ」を用いる方法論は、安直であるが、それなりに理解はできる。しかし、それにしても登場させているキャクターのセレクションとその組み合わせが、東京五輪公式グッズを絶望的にダサいものにしている。

もちろん、ひとつひとつのキャラクターたちは、日本を代表するアニメキャラクターである。いささか古さを感じるのは、海外での知名度を考慮にいれたためのことだろう。海外に向けた情報発信という役割を考えれば、やむをえない。

しかも、オリンピックのような大きな規模の公式商品であれば、スポンサーや行政など、様々な絡みがあり、デザインの良し悪しを超えた判断基準、条件が無数にあるのだとは思う。どこの国だってそうなのだろう。

しかしながら、そのような諸条件を差し引いても、やはり、このデザインはあまりにもひどい。ダサいだけではなく、オリンピック的でも、東京的でもない。似たようなバッタ物のTシャツは世界中の露店で売っている。

人気キャラクターを敷き詰めただけのコンセプト不明の組み合わせは、まるでジャンルを無視してベストセラー本だけを集めた全集のようだ。三ツ星レストランの寿司とフレンチを一緒に提供するレストランは絶対に三ツ星にはならない。

合理性とバランスを欠いた組み合わせの中途半端さに、「ヒット作である」ということ以外に何ひとつ見つけることのできない共通点。背景を赤文字で埋め尽くしたファストファッションの「歳末セール広告」のようなデザインも、そのダサさに追い討ちをかけている。圧倒的な「コレジャナイ感」に溢れている。

【参考】<なぜ「炎上」は起きるのか>五輪エンブレム選考に見る「日本のデザイナーは勘違いで時代遅れ」

さらに言えば、海外では圧倒的な知名度と市場を持つ「ポケモン」がなく、その枠と思しきポジションに「妖怪ウォッチ」が採用されるなど、かならずしも「海外向け」とは思えない点が、ダサさだけでなく、違和感も高めている。考えすぎかもしれないが、ポケモン枠に「妖怪ウォッチ」を入れる理由には、東京五輪とは無関係なビジネス的な思惑の存在も頭をよぎる。

もちろん、現段階で海外での知名度がなくても、「これから海外に発信してゆきたいコンテンツ」はいくらでもあろう。それらを採用することは十分ありうる話だ。だとしても、今回のようなラインナップにはならないはずだ。

また、少女向けアニメ「プリキュア」は毎年シリーズが変わり、キャラクターは大幅に変更される作品だ。来年(2017年)には変更されているであろうキャラクターを2020年の五輪公式商品として採用する点も不可解だ。2020年のイベントのためのグッズに、発売年(2016年)の干支である「申(サル)」のイラストを入れるようなものだ。2020年の干支は「子」であるにもかかわらず。

このように考えてみると、世界に向けた「東京五輪公式グッズ」というよりは、東京五輪を利用した「国内マニア向け商品」とも思えてしまう。少なくとも、毎年デザインが変わる「プリキュア」であれば、今回の発表された公式商品は「2016年限定モデル」になる。

海外で大きなニーズを持つ日本コンテンツ群の中でも、アニメや漫画のような素材は、その扱いが非常にナイーブだ。流行っている、売れているからといって、そのまま安易に移動・移植するだけでその真価が発揮できるというものではない。ひとつ間違えれば逆効果でさえある。

日本の財産とも言えるコンテンツ群を、このように魅力のない形に組み上げ、ここまで絶望的にダサい公式商品として出してしまう感性には驚かされる。東京五輪組織委員会には豊富な人材がいるはずなのに、なぜ、こんな結末になってしまうのか。忠告したり、アドバイスする役回りの人たちは何をしているのか。

アニメキャラクターたちの「コレジャナイ」利用をしている一方で、毎回50万人を集める世界的なオタクの祭典「コミケ(コミックマーケット)」は、会場である東京ビックサイトが東京五輪のメインプレスセンター/国際放送センターとして利用されるために、複数回の正常な開催が危ぶまれている。

そこにも矛盾と違和感を感じずにはいられない。いったい東京五輪はどこに向かっているのか?

 

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藤本貴之(ふじもと・たかゆき) 東洋大学総合情報学部・准教授(情報デザイン論・メディア構造論)/北陸先端科学技術大学院大学・教育連携客員准教授/藤本情報デザイン事務所・執行役員/JAGDA正会員/最先端のメディア研究・メディア技術の知見から、アカデミズムの枠を超え、企業や自治体などを対象としたメディア設計や情報発信戦略など、数々の実践的なプロジェクトを手がけている。主な著書に『情報デザインの想像力』『脳にアイデアを思いつかせる技術(講談社)』『映像メディアのプロになる!(河出書房新社)』など、多数。