<東京ガールズコレクション創業者・大浜史太郎氏インタビュー>「デザインなんて全部パクリ」スタイリングこそ日本ブランディング


藤本貴之[東洋大学 准教授・博士(学術)/メディア学者]

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2020年の東京オリンピックを控え、海外への日本PRがあらゆる場面で盛んだ。地方自治体はもとより、サブカルチャーやITは言うまでもなく、ファッションからエンターテイメントにあらゆる領域に至っている。

訪日外国人観光客が急増する一方で、今、日本のブランディングやデザインは揺れている。昨年はオリンピックのエンブレム問題や新国立競技場の建設問題で白紙撤回するなど世界中に日本の体たらくぶりを見せて失笑された。

本稿ではジャパンブランディンの第一人者で、毎回3万人を動員するファッションイベント「東京ガールズコレクション」(以下、TGC)の仕掛人/初代実行委員長として活躍したブランディングディレクター・大浜史太郎さんに、日本をブランディングするための「デザイン」について語ってもらった。[聞き手:藤本貴之(東洋大・准教授)]

***(以下、インタビュー)***

[大浜史太郎氏(以下、大浜)]佐野氏による「五輪エンブレム問題」。あれは単に「産地の偽装問題」。佐野氏が自分のデザインを「これは○○さんからインスピレーションを得ました」とか「○○年代へのオマージュです」的に、正直にぶっちゃけて説明でもしてれば誰も非難しなかった(笑)。昔は、パリコレのデザイナーだって視点によっては、みーんなパクリ放題だった。米国系アートやウォーホルもそうです。日本やアジアのものもけっこう欧米にパクられてますよ。ただ互いにリソースがバレなかっただけ(笑)。

[藤本貴之(以下、藤本)]それはあらゆる「デザイン」に言えることですよね。

[大浜]そもそも、日本のストリートファッション界には多くの皆さんがイメージするデザイナーなんて存在しません。一部のモード系のデザイナーは怒るかもしれませんが、多くの日本のファッションブランドはデザイナーというより、ブランドを統括するディレクターやスタイリストさんたちが「こんなイメージで」という形ですすめていく「スタイリング提案型」が実情です。
TGCに参加するストリートブランドも、ほとんどが「スタイリング提案型ブランド」みたいなもの。でも、それが現代では新しい価値を創造している。

[藤本]タレントさんや人気モデルがディレクションしたブランドも多いですしね。

[大浜]一般的に、ファッションディレクターやバイヤーと呼ばれる人たちがLAやパリやNYへ行って買い付けしてきた洋服を、「少しアレンジして」オリジナルと言って提案するのも一般的です。

[藤本]もちろん、それが悪いわけではないですよね。デザインの定義、あり方としては、それが現在の技法であり、手法なわけですから。

[大浜]アパレルなんて歴史的に見ても、パクリしかないわけで(笑)

[藤本]今はインターネットでアイデアの着想元が検索で容易にバレてしまう時代。デザインのあり方も大きく変容している。そもそも「デザインとは何か?」を日本全体で再定義した方が良い時代に突入していますね。

[大浜]僕は、基本的にデザインには3つの定義があると思っています。1つめは、「シンボル(象徴や伝達型アイコン)」としてのデザイン、2つめは「スタイリングやコーディネート」としてのデザイン、そして3つめが「アート」としてのデザインです。そして、クリエイターなら誰もがアートに憧れます。出来栄えがどうであれ、「私のデザインはすべて価値があるのだ」っていう領域は、発注主の意図や目的など無視しても成立するからです。

[藤本]おっしゃることは理解できますが、僕はデザインとアートはまったく別モノであるという定義をしています。アートとデザインの混同こそ、デザイナーの大いなる「勘違い」だと。もちろん、アーティストがデザインをすることはあると思います。しかし、その逆はない。そもそも「発注主の意図や目的など無視したデザイン」は成立しませんから。

[大浜]アートとデザインの議論はさておき(笑)、日本は歴史的に加工貿易が得意で経済発展してきた背景があります。だから、オリジナルの発想やデザインより、そもそも海外にあるものを持ってきてスタイリングやコーディネートする方が得意なはずです。

[藤本]平賀源内みたいなパターンですね(笑)

[大浜]であるならば、アートのような「オリジナルデザイン」の発信はこの際はある程度は切り捨てて、「我々のデザインの再定義はこれです! 日本はスタイリング強国です!!」って言いきって勝負したほうが、むしろ一瞬で世界をリードできるし、日本のブランディングになる。東京の街を見渡してください。こんなに建築デザインが多様で節操のない都市もないですよ(笑)。この日本を無秩序で退廃的と呼ぶのか、いや伝統と先進性が共存している・・・と呼ぶのか。事実、日本はこの土壌ゆえに日本人の建築家は世界でもトップレベルになりました。不思議と日本の「和や美」は独特に「スタイリング」されて調和のとれた都市として海外からは見られ始めています。一方、国内のファッション業界は少し遅れていますが。

[藤本]「オリジナルの不在」は日本に限った話ではなく、今日のクリエイティブとされる産業全般に言える問題ですよね。

[大浜]その通りです。世界に目を向けると海外のラグジュアリーブランドだって、実は高級な「お茶漬け」みたいなものなんです。グッチだ、シャネルだっ・・・と言っても、統括するクリエイティブディレクターがこないだまでライバルだったブランドから転職してくるとかも多いので、どうしても実体的には「梅茶漬けとシャケ茶漬けの違い」くらいしか出せない。商品ラインによっては風味や匂いの違いくらいなものです。

[藤本]ラグジュアリーブランドは「高級なお茶漬け」ですか(笑)

[大浜]事実、ファッションって言いながら、誰もがどうにかして一生懸命「アート化しよう」と必死なのは大量の在庫を抱えている怖さがブランド業界全体にあるからです。ファッションを「アート化」すれば、古くなっても限定モノみたいにしていつまでも付加価値を維持できる。

[藤本]そもそも、アート化しよう!という部分に、大きな負荷がかかっているわけですよね。そういうことは、僕から見れば「不可能だ」と思うわけです。

[大浜]でも、その絶大な憧れのイメージがフランスやイタリア全体のブランディングの底上げになっている事実がある。今更、日本のすべてのデザインを京風や和風にはできないので、むしろ逆手にとってスタイリング大国に徹するべきだと思います。

***(以上、インタビュー)***

東京ガールズコレクションを牽引した大浜史太郎氏。現在は、海外にも拠点持ち様々なプロジェクトを進めているだけに、日本の現状を見る目は冷静だ。「スタイリング強国、ニッポン」という発想から何が出てくるのか? 今後の大浜氏の動向に注目したい。

 

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藤本貴之(ふじもと・たかゆき) 東洋大学総合情報学部・准教授(情報デザイン論・メディア構造論)/北陸先端科学技術大学院大学・教育連携客員准教授/藤本情報デザイン事務所・執行役員/JAGDA正会員/最先端のメディア研究・メディア技術の知見から、アカデミズムの枠を超え、企業や自治体などを対象としたメディア設計や情報発信戦略など、数々の実践的なプロジェクトを手がけている。主な著書に『情報デザインの想像力』『脳にアイデアを思いつかせる技術(講談社)』『映像メディアのプロになる!(河出書房新社)』など、多数。