<日本美人はセクシーさや整形では表現できない>「世界で最も美しい顔100人」に日本人が少ないことが素晴らしい
藤本貴之[東洋大学 准教授・博士(学術)/メディア学者]
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毎年恒例となったアメリカ映画サイト「TC Candler」による「世界で最も美しい顔100人(The 100 Most Beautiful Faces of 2015)」が今年も発表された。
いうまでもなく、アメリカの、しかも映画サイトが選ぶランキングであるため、その顔ぶれには「いかにもアメリカのハリウッド美人」が並ぶ。もちろんそのエントリーを「美しい」と感じることに筆者もやぶさかではないが、それでも「やっぱり、ハリウッド型美人だよね」と思う日本人は多いはずだ。
「TC Candler」というサイトの指標が、ハリウッドの美的感覚を代表しているとは言えないものの、アメリカ人が考える「美人の基準」がある程度分かるランキングになっているように思う。
日本人としては、石原さとみ(19位・女優)、桐谷美玲(31位・モデル/女優)、島崎遥香(74位・AKB48)、佐々木希(84位・モデル/女優)の4名がランクイン。彼女らが現在の日本を代表する「美人さん」たちであることは間違いないとは思う。しかしながら、この4名を美しい日本人であると認めつつも、ランク入りしたこと自体に少々驚かされる。
なぜなら、「TC Candler」の基準が、ハリウッドにありがちな「アメリカ的セクシーさ」に置かれているように思うからだ。全く系統の異なる「日本の美人」を、よくぞランキングしてくれたものだ、と感じてしまう。どうやって選出したのか、選考過程を聞きたいぐらいだ。
ランキングの基本的傾向は、アメリカ趣味ならではの「セクシーさ」であり、ランキングされたトップ100の多くが「女豹の如きセクシーさ」にあふれている。日本人4名の美しさとは明らかに路線が異なる。「セクシー全開のレースクィーンの中に、美少女コンテストのファイナリストが混じっている」ような印象だ。
もしかすると、日本人4名のランキング入りは「TC Candler」による人種や民族の比率的な平等性が考慮された結果ではないか、と余計な邪推をしてしまうぐらいだ。
しかしその一方で、このランキングに日本人がわずか4名しか入っていないことは、日本人としては誇らしいことであるように思う。そもそも、日本人の「女性の美しさ」の基準は「アメリカ的セクシーさ」とは無縁だ。一歩間違えれば、アメリカ的セクシーさとは、日本人にとっては「下品」「卑猥」の類に映りさえする。
つまり、「アメリカ的美の基準」によるランキングに日本人が大量に入り込んでしまうほど、「日本人の美意識」は崩壊していない、ということの表れであるように思うからだ。
アメリカ的美の基準である「セクシーさ」が悪いとは言わないが(筆者はむしろ好きだが)、国や民族により「美意識」「美の基準」「美の条件」は、歴史的にも文化的にも異なっている。そのため、「TC Candler」のランキングに入るためには、自国の美意識からは逸脱した(異なる)美人でなければならない。
そう考えれば、日本人が4名しかランキングされていないということは、「日本を代表する美人」の多くが、日本人が感じる「美しさ」から逸脱していない、ということになる。これは自国の文化や価値観が侵されることなく自立していることを意味し、誇らしいことだ。
ハーフタレントの全盛の昨今、「欧風セクシー美人」などいくらでもいるだろう。もちろん、整形手術をすれば、「アメリカ的セクシーさ」など簡単に造ることはできる。
しかし、日本人が持つ根本的な「美の基準」はハーフ美人でも、整形美人でもない部分にあることは日本人自身が一番良く知っている。主催の「TC Candler」も、日本人の美意識を完全に無視してまで自国趣味の日本人をランキング入りさせるほど愚かではない。だからこそ、世界的にも人気の高い日本美人が数多くいる中、アメリカ型美人ランキングに「たった4名」しかランキングされていないのではないだろうか。
時代によって美人の基準は異なるものの、日本人の「美しさ」を支える重要な要素として間違いなく言えることは「凛とした美しさ」だ。男を誘惑する女豹のような「セクシーさ」ではなく、力強い「凛とした美しさ」は、言葉ではなかなか言い表せない。「凛とした美人」を日本人の感覚通りに英語で説明することは非常に難しいだろう。
「凛とした美しさ」は整形手術や化粧では簡単に作れない。だからこそ欧米人が憧れる「凛とした」サムライ美人には、「尊い美しさ」がある。
英語で表現の難しい「凛とした美しさ」を「TC Candler」のアメリカ人スタッフに理解してもらいたいとは思わない。だからこそ、「世界で最も美しい顔100人」ランキングには、日本人は少なければ少ないほど、日本人として誇らしく、素晴らしいことであるように思う。
来年度はぜひ、「TC Candlerランキング0人」を目指して、日本の女性のみなさんは、ますますその美しさを磨いてほしいものだ。
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