<東京都自閉症協会理事長が語る>事件が相次ぐ“薬物依存”問題〜“危険ドラッグ“は自閉症の支援の場でも


今井忠[東京都自閉症協会・理事長]

 

脱法ハーブがついに“危険ドラッグ”へと名を改めた。

常軌を逸した自動車事故などの誘因となったこの問題の根本が“薬物依存”にあることは言うまでもない。ところで、この“薬物依存”というキーワード。自閉症や発達障害に対する精神科の薬物の用い方についても、残念ながら当てはまり得る言葉となる。

私は薬物療法にやみくもに反対するのでもないし、抗てんかん薬など効果が確定している薬を問題にしているのではない。薬物療法の専門家ではないので、この問題を語るのはとても荷が重いのだが、現実問題としてかなりの根深さを感じている。

自閉症などの発達障害は、先天的な脳の器質が原因で、現在のところ薬で治ることはない。薬は、てんかん、強いこだわり、不安、興奮など自閉症にともなう症状を和らげるために処方される。副作用などのリスクに配慮して薬の使用を最小限にする医師はいるし、彼らは薬以外の方法が重要であることをよく知っている。しかし、そのような医師はむしろ少数派である。なかには「自閉症という診断=服薬」という考え方の医師もいるのだ。

自閉症の人には、強いこだわりや興奮などの症状をやわらげるために統合失調症に用いられる抗精神病薬と、その副作用止めとして抗パーキンソン病薬がよく処方されている。これらは減らしたり、止めたりすることが難しい。また、飲むからには「薬が効いている」と感じられるほど顕著な変化が求められ、その結果、覚醒レベルが必要以上に下がってしまい、ずっとボーっとしていたり、学習が進まない状態になっていることも珍しくはない。薬が本人の生き生きした活動を奪ってしまうのだ。

最近は、薬の使用開始が低年齢化し、幼稚園や学校の先生が薬の使用を親にすすめることもあると聞く。自閉症と診断されて間もない親の場合「子どもの状態が落ち着くのであれば」と藁にもすがる気持ちになっていることは、容易に想像ができる。なかには「薬を助けとして自分のコントロールが難しかったお子さんが落ち着けて学習ができるようになった」というような成功例もある。

しかしながら、ケアホームや入所施設などでも、ちょっと暴れると薬を増やしたい、就寝時間を守らせるために睡眠薬を使用したいという話が、職員さんから出る。

「支援が薬依存」になってしまっているようでは、支援者として落第である。虐待防止が叫ばれると(もちろん虐待はあってはならないことなのだが)、薬による鎮静化がますます広がるのではないかと危惧してしまう。

このような問題を専門家にご理解いただき、親、当事者、支援者、すべての人が薬に詳しくなり、どうしたらいちばんいいのか、改善を図っていきたいと強く思う。

 

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今井忠

今井 忠(いまい・ただし) 東京都自閉症協会 理事長。Get in touch 監事。元製造会社の現場に勤務、その後、経営に従事。現在は、障害者団体役員、そのかたわら、なかなか社会に参加したくてもできにくい方たちの働く場を細々と運営。重度の自閉症の子の親。