<声優・寺瀬今日子氏に聞く>声優の技術はビジネスにも役立つことも満載


尾藤克之[経営コンサルタント]

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いまや人気職種ともいえる声優ですが、その仕事内容はあまり知られていません。声優業界で生き残るために、なにが必要なのか。今回は、声優・ナレーターとして、「とくダネ!」(フジテレビ系)のナレーションをはじめ、アニメや洋画の吹き替えなどで活躍されている、寺瀬今日子氏(以下、寺瀬)に、声優の仕事についてお聞きしました。

●プロの声優の仕事とは

寺瀬:声優の仕事は、ひとつのレギュラー番組が取れたからといって安心はできません。放送期間は、視聴率などの影響で終わってしまうこともあります。そのため、これで安心ということは決してない世界です。不安定な世界で生き残るためには、メンタルの強さが大切です。

—仕事はどのように依頼をされるのでしょうか?

寺瀬:声優の仕事は、指名で来ることはありません。例えば「30代の落ち着いた女性の声」「20代キャリアウーマンの声」というオーダーが事務所に来ます。でも、この声のイメージに該当する候補は、10代の新人から70代のベテランまでたくさんの声優がいます。たいていの声優は、いろいろな声が出せるように普段から訓練しています。同じ土俵のなかで、新人からベテランまでか戦うのが、声優業界です。その中で選ばれて継続して仕事がくるように努力しなくてはなりません。

—選ばれるということは、オーディションみたいなものがあるのですか?

寺瀬:オーディションと言っても、本人がオーディションを受けにいくことは、めったにありません。オーダーを受けて、事務所がそのイメージに合った声を持つ声優を選んで、ボイスサンプルを提出するのです。そのためボイスサンプル作りは、声優にとっては、とても重要な作業です。依頼主には、たくさんのボイスサンプルが届きますから最初の10秒のツカミが大切です。声優の世界でも第一印象が大切なのです。こうしてインタビューを受けている間も、私のボイスサンプルはあちこちで働いているわけです(笑)

—最初の10秒のツカミをどのように演じるのですか?

寺瀬:俳優が役作りをするときは、画面やスクリーンを通じて、表情や動作、声の抑揚などを調整しながら伝えようとしますね。ぞくに演技力と言われているものです。人それぞれの方法があって正解はないのかも知れませんが、声優にも演技力は必要です。大切なことは声の嘘つきになることです。声優は声に表情や動作などの動きをつけなければいけません。声を使い分けて、本物らしく見えるよう嘘つきになるしかありません。

●仕事に使える技術とは

寺瀬:言葉に変化をつける技術はとても重要です。簡単ではありませんが、ビジネスパーソンの皆さんにもお勧めしたいスキルです。営業、プレゼン、接客、あるいは社内の会議や恋愛でも大きな影響があると思います。聴衆やお客様を前にして、どのような声の大きさ、高低、トーン、速さ、感情の入れ具合をすれば良いのか、意識するだけでも違ってくると思います。落ち着いた低い声で話せば、人は安心感や信頼感を持ってくれます。また、早口で高いトーンの話し方からは、高揚感を得て財布の紐が緩くなるかもしれません。ジャパネットたかだの高田社長の高いトーンがまさに該当します。声優の立場でコメントするなら、高田社長は声の魔術師ということになります。

—日頃のトレーニングはどのようなことをするのですか。

寺瀬:声優は声だけで表現しなくてはいけない仕事ですから、まず言葉が伝わることが大切です。これを滑舌といいます。滑舌のトレーニングは欠かせません。ところがこの滑舌練習は毎日継続しないと上手くいきません。感覚を忘れないようにするために日々の練習が大切です。声のコントロールは、息のコントロールとも言えます。腹式呼吸をはじめ、呼吸法の練習も必要です。私は、このトレーニングを毎日継続しています。

—本日は有難うございました。

一般的には、あまり知られていない声優の技術ですが、声に表情をつける技術や日々のトレーニングを欠かさない心がけはビジネス局面で役立ちそうです。魅力的な声の使い手は、人の心を惹きつけ、信頼を得る武器になることでしょう。

 

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尾藤克之(びとう・かつゆき)経営コンサルタント。東京都出身。衆議院議員秘書、大手コンサルティングファーム、IT系上場企業等の複数の事業会社の役員を経て現職。障がい者と健常者の共同生活によりボランティアスピリットを培うための社会貢献事業(アスカ王国)をライフワークとしている。埼玉大学大学院博士課程前期修了(経営学修士、経済学修士)