大晦日「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」は「紅白歌合戦」と同じ轍を踏むのか?


高橋維新[弁護士]

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2014年の大晦日も、「笑ってはいけない」が放映された。

正式名称を述べておくと、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」(日本テレビ・以下「ガキ」と呼称する)という番組の、「笑ってはいけないシリーズ」という一企画である。「笑ってはいけない」だけが独り歩きしており、元はガキであるということがあまり知られていない気がするので、まず注意喚起をしておく。

ガキ自体は、日テレで20年以上続くダウンタウンの冠バラエティ番組である。日テレのバラエティの中では、笑点の次に歴史の長い長寿番組である。平時は、毎週日曜日の夜10時56分から30分間放送されており、基本的には松本人志がやりたいことをやりたいようにやっている印象を受ける。

実験的な企画も多く、正直なところ当たり外れは大きい。ゴールデン進出の話もあったようだが、20年間ずっとこの深めの枠で(=すなわち予算も限られた中で)番組を作り続けている。そのため、20年間ずっと番組を追いかけてきた人々を始め、ディープなファンはとことんディープである。

「笑ってはいけない」も、この通常放送の中で生まれた企画であり、当初は罰ゲームであった。まず罰を受ける人間をレギュラー5人(ダウンタウン・ココリコ・月亭方正)の中から決めるゲーム企画があり、これに負けた者だけが、罰ゲームとして「笑ってはいけない」空間の中で一日を過ごさないといけないという仕組みになっていた。そのため、レギュラーの5人は罰を受ける者と仕掛け人になる者に必ず分かれていた。そして、ダウンタウンの2人は必ずどちらかが仕掛け人に回るようになっていた。

ガキの通常放送の中で何回かに分けて放映された「温泉宿」、ゴールデンSPだったが大晦日ではなかった「温泉宿in湯河原」「高校」と、大晦日に移ってからの初回「警察」は、全てこの構図であった。「警察」は、大晦日に放映するのが初めてということもあり、ガキに枠として与えられた6時間のうち3時間は別の企画(山崎vsモリマン)をやるなど、参加メンバーの点以外にも過渡的な部分があった。

5人全員が参加するようになったのは、大晦日2年目の「病院」からである。

「笑ってはいけない」も、大晦日にやるようになって9年目であり、紅白の最も有力な対抗馬として広く知られている。それゆえ、「今年はつまらなかった」だの「去年よりはマシだ」だの「このコーナーはもういいんじゃないか」だの、毎年さまざまな毀誉褒貶に晒される。マンネリ化という言説も、よく聞く。

確かに、今回の2014年大晦日に放映された「大脱獄」で行われたのは「バス」「所長挨拶」「刑務所対抗」「捕まってはいけない」「豆絞り」「暴露トーク」「蝶野ビンタ」「驚いてはいけない」といった以前も見た企画ばかりであった。

もう一度最初の話に戻るが、「笑ってはいけない」も当初は罰ゲームだった。それも、ガキという番組に特有の、かなりきつい部類の罰ゲームだったのである。(だから、この「きつさ」が苦手な人にはとことん合わないのだが)

番組でもよく露出するチーフプロデューサー・菅賢治(通称ガースー)が、ダウンタウン(の漫才)を東京の人にも知ってもらいたいと考えて、2人の東京進出の足掛かりとして作ったのが「ガキ」である。今ではすっかり大物になって楽そうな仕事ばかりをしている松本・浜田も、ガキでは体を張っていた。

年をとってからも、体を張らされていた。大物になったダウンタウンがとことん苛め抜かれる姿を見られるのが、ガキの魅力でもあった。推察するに、2人も自分たちを拾ってくれたガキという番組には感謝しているただろう。だから、気の進まない仕事でもガキの頼みであればやってくれたのだと思われる。

ところが今は2人とも年をとった。松本に顕著だが、ガキでさえもきつい仕事をやらなくなった。きつい仕事をさせようとするスタッフに文句を言うようになったのだ。

2年前の「空港」のオンエアでも松本の文句の多さは指摘されている。

通常放送では、「寒中に夏のような格好でロケをして、文句を言ったら罰ゲーム」という趣旨の企画で、ダウンタウンの2人が逃げ出して企画が途中で終了になったという回が記憶に新しい(ガキによく見られる「企画の体をしたコント」の可能性もあるが、筆者にはどうもそのようには見えなかった)。

松本が何かにつけて文句を言うようになった結果、スタッフも無意識に手心を加えるようになってしまった。

「笑ってはいけない」でも罰ゲームを受けるメンバーと仕掛け人になるメンバーとの対抗という構図は廃された。この構図が、ダウンタウンの2人によるきつい罰のかけあい(先述の通り、ダウンタウンは必ずどちらかが仕掛け人に回るようになっていた)を生み、きつい罰に堪えるダウンタウンというおもしろみを増強していた(だから、今でも松本と浜田の対決の構図が垣間見られる「待機室での5人のつぶし合いが一番おもしろい」というのはよく指摘されるところである)のだが、これがなくなったのである。

このままやっていれば、ガキはいつしか敵として見据えていたはずの「NHK紅白歌合戦」と同じように陳腐化してしまう。紅白そのもののような嘲笑の対象になってしまうのである。

この記事も、「来年からやめれば日テレは英断だ」と結べばきれいにまとまるし、周囲からもそういう暗黙の圧力を受けているが、それもやはり陳腐であるし、筆者の真意とも異なるので、筆者の本当に思うところを述べておきたい。

大晦日にガキがやらなくなってしまえば、ただでさえ少なくなった「見るべきテレビ」が更に少なくなってしまう。ガキは、20年も続いたオバケ番組である。他の有象無象のバラエティにはない職人のような信念と技術を持っている。

筆者は、ガキをできるだけ長い時間見ていたいと考えている。ガキにも、テレビにもこれ以上絶望したくない。だから、ただやめるのではなくて、続けてほしいと切に願う。別に、「笑ってはいけない」ではなくてもいい。

でも、それは結局「笑ってはいけない」をやめろと言っているに等しいな。ハハハ。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。