<不倫は悪か?>ニュースはなぜ「悪いこと」しか伝えないのか

社会・メディア

高橋秀樹[日本放送作家協会・常務理事]
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ニュースと言えば、悪い知らせが多い。事件、事故。不祥事。
一体なぜ、ニュースはなぜ「悪いコト」しか伝えないのか。これは、人間の脳の発達過程に理由があると言うのが最新の脳科学の知見だ。
人間は進化の過程で、生き残るためにあらゆる危険を避ける訓練をしてきた。火山から上がる噴煙、今まで嗅いだことのない匂い、見たことの生物・・・などなど。脳はこうした「ネガティブ情報」に敏感に反応するように進化していった。
「ネガティブ情報」に対する反応の強度は、「きれいな花を見つけた」などの「良いコト(悪くないコト)」に対する反応より何倍も強いのだという。そのことは実験で確かめられている。これを「ネガティブ・バイアス」という。
つまり、伝える内容が「良い」「ハッピーな」ニュースよりも、どす黒い悪や、途方もない危険の方が視聴者にはインパクトがあるというわけだ。脳がそのように出来ているのである。そのため、ビジネスモデル上、多くの人の目を引きつけなければ成り立たないニュースは自ずと「ネガティブ情報」ばかりになってしまう。
では、自分にとってどうでも良いモノにも思える「他人の不倫」のようなニュースは人間にとっての「ネガティブ情報」に入るのか。
じつは、これらも「ネガティブ情報」に入るのである。通常は1人が社会通念であるはずの繁殖相手が、2人も3人もいる「他の個体(他人)」の情報は、自分にとっては不利な「ネガティブ情報」に他ならない。
 
昨今、メディアを賑わす芸能人の不倫や重複交際のニュース。芸能人とはいえ、自分とは関係のない「他人」の色恋ごとが騒がれ、それに注目してしまう背景には、こういった人間の脳機能がその要因にあるようだ。
 
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