<ハーフでハーバードMBA>ショーンKを作ったのは「あるべき姿」をもとめる世間だ – 茂木健一郎

社会・メディア

茂木健一郎[脳科学者]
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私は、ショーンKさんがご自身の学歴について、真実ではない情報の開示に直接ないしは間接的に関与されていた可能性があることについて、決して肯定しているわけではありません。
また、未だによくわからないのですが、実は「ハーフ」ではなく、「純粋日本人」だという一部の情報についても「ほんとうかなあ」と思いつつ、戸惑っているというのが正直な気持ちです。また、番組、特に報道番組のキャスターとして、学歴等について真実ではない情報を開示していたことで、資質が問われる、という論も、理解できます。
その意味で、結果として、今回ショーンKさんが番組をご辞退されたことも、妥当だとは思います。虚偽は「事実」と「あるべき姿」の間の乖離から生まれるものだと思います。
その意味で、「あるべき姿」が、ハーフ、ハーバードMBA、国際コンサルタントである、という世間の実態に、私は未だに、違和感を抱かざるを得ません。あるべき姿があると、それを持たない人は、コンプレックスを持つでしょう。
ショーンKさんも、ひょっとしたら、コンプレックスを持たれていたかもしれません。しかし、私は本来、人間にはあるべき姿などないと、思っています。
世間は平気で、人生にはあるべき「学歴」や「経歴」があるのだという情報を垂れ流ししているように、私には見えます。立派な週刊誌が、東大合格者高校別一覧なるものを掲載したり、「正社員」と「非正規」の間に「勝ち組」「負け組」の差があるような記事を載せたり。
LGBTの多様性については、ようやく理解が深まってきているのに、学歴や職については、未だに差別、区別をして当然という世間の風潮があります。無自覚に「ハーフでかっこいい」「ハーフできれい」と書いたり。
ショーンKさんは、世間の、そのような「かくあるべき」という像に、パーフェクトストームのように当てはまっただけ、という気がします。だとしたら、ショーンKさんを作ったのは、ご本人であると同時に、世間なのではないでしょうか。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 
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