参院選の争点のはずなのに忘れられたイラク戦争
上出義樹[フリーランス記者/上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ]
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<英国でイラク戦争参戦の誤りを指弾する膨大な報告書公表>
7月10日投開票の参議院選挙まで残りわずか。安倍晋三政権与党の自公両党が改憲論議の争点化を徹底して避けているのに対し、民進や共産などの4野党は、「改憲4党」による3分の2越えの議席阻止を訴え、安保法制の廃止と併せ懸命のアピールを続けている。
そんな中で飛び込んできたのが、2003年のイラク戦争参戦の是非を検証する英国の独立調査委員会がこの6日に公表した2万6千語にも上る報告書。イラクの大量破壊兵器の開発・保有という誤った情報に基づくブレア英政権(当時)の参戦を厳しく指弾している。
<日本では2012年におざなりな4ページの報告だけ>
翻って当時の日本の対応を見ると、小泉純一郎政権は自衛隊をサマワに派遣し、米英を側面から支援した。しかし、日本は民主党政権末期の2012年12月に外務省が、米国追随のイラク戦争のごく表面的な4ページの報告書を公表しただけ。関係国に迷惑がかかるなどとの理由から、問題の核心を突くような政府内の議論は公にされていない。
【参考】<報道の危機?>政権に及び腰の「お行儀よすぎる記者会見」の常態化に危惧
新たに政権を担った安倍首相は、自民党政権が決めたイラク参戦であるにも関わらず、再検証しないことを国会で明言している。当の米国を含め関係国から次々とイラク戦争の重大な誤りを指摘する検証結果が示される中で、日本だけが政府による検証作業に手を付けていない。
<安倍政権はイラク参戦を検証せず米国追随の安保法制強行>
2015年の安保法制の国会審議では、このイラク戦争の反省・教訓が野党の法案反対の論点の一つともなったが、安倍政権と与党は国会での数の力でこれを突っぱねた。
今回の英国の報告書を報じたメディアのうち、朝日の7月7日付朝刊は、イラク戦争の検証をしない安倍政権に対する批判記事も掲載。「秘密がつきものの安全保障問題は民主主義の死角になりやすり」「安保法制が成立し、海外で自衛隊が米軍と緊密に連携する可能性が大きくなった」と指摘。「同盟強化路線をひた走る」安倍政権への強い危惧を示している。
<参院選で与党陣営は民主主義に不可欠な検証問題を黙殺>
このように安保法制や憲法にも深い関わりがあるイラク戦争の検証問題だが、今回の参院選では、安保法制に批判的なメディアを含め、英国の報告書が出るまではほとんど蚊帳の外に置かれてきた観がある。野党の一部は英国の報告書の公表後、イラク戦争の検証をしない安倍政権を批判しているが、与党陣営は当然のようにこの問題を黙殺している。
残念ながら、日本の民主主義の危うさと限界を感じざるを得ない。
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