NHK「あなたはグローバル化に賛成?反対?」という質問はミスリード

社会・メディア

保科省吾[コラムニスト]
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11月23日午前11時からNHKで『解説スタジアム グローバル化の功罪は これからの日本と世界 解説委員が生討論』という番組が放送された。
NHKの解説委員の層の厚さを感じさせるなかなか見応えのある番組であった。民放では出来ない番組である。ただし、冒頭で違和感のある質問がテレビ視聴者に向かって発せられた。「dボタン」をつかい双方向で答えるその質問は、

「あなたはグローバル化に賛成ですか、反対ですか」

というものであった。筆者はNHKに次のような趣旨のメールを送付した。

「グローバル化が是か非かという問いは世論をミスリードする。この耳あたりのよい言葉には賛成が多いに決まっているだろう。日本の自壊を防ぐには、ほどほどの『グローバリズム』とほどほどの保護主義が必要である」

グローバル化とは、「全地球化」と訳せば、「各国がそれぞれの利権だけを主張するのは止めて、みんな仲良く地球市民になりましょう」と言うようなことに思えるだろう。
【参考】<グローバル化と英語は無関係>ガラパゴス化は英国でも米国でも起こる
だが、グローバリ化とは貿易の面を強調して訳せば「国際分業化」と言うことである。分業というのもよいことのように思えるかも知れないが、自動車工業ではこんなことがあった。
効率を高めるため車の生産ラインでは製造工程を細分化して、ベルトコンベヤでの流れ作業を導入した。ネジを締める人は一日ネジを締め続け、バックミラーを組み付ける人は来る日も来る日もバックミラーを組み付ける分業の仕組みを作った。
その結果どうなったのか。非正規雇用で製造ラインに組み入れられる人はネジしか締められない人、バックミラーしか組み付けられない人となった。
非正規雇用の人が将来は自動車を作る人、自動車を修理する人になろうとして大企業で働いてもスキルは上がらない仕組みになってしまったのである。
国際分業の場合はこうだ。
たとえばフィリピンは熱帯の豊かな土地だ。だが、換金率の高いパイナップルを輸入したい外国企業がフィリピンに入ってくると、自分たちの食べる食料を作るための畑はどこもかしこも金目当てのパイナップル畑に変わってしまった。
フィリピンはパイナップルだけ作っていればよい国、オーストラリアは羊毛だけ生産していればよい国、日本はゲームのハードだけ作っていればよい国になってしまうのである。これが「国際分業」である。
ちょっと考えれば「国際分業」は、世界が平和でなければ成り立たないことが直ぐ分かるだろう。世界は平和か。
日本でさえ、核兵器を国際法で禁ずる「核兵器禁止条約」について、国連委員会の交渉開始の決議案に反対しているのである。
 
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