NHK大型企画「発達障害プロジェクト」は当事者が待ち望んだ番組だ
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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NHKが2017年5月から1年間の予定でスタートした「発達障害プロジェクト」。複数の番組横断(「あさイチ」「 NHKスペシャル」「おはよう日本」「クローズアップ現代」など)で放送されるというこの企画はNHKならではの規模である。
5月21日(日)放送されたNHKスペシャルでの特集第1弾「発達障害 ~解明される未知の世界~」は、発達障害の当事者家族、研究者療育者などが待ち望んだ企画が始まったと期待させるすばらしいものであった。
全く発達障害を知らない人が、当該番組を見て妥当な発達障害理解を深めるに当たってすぐれて適切なものであったと思われる。
現在、自閉症スペクトラム当事者の療育は定型発達者(健常者)に生活スタイルや考え方を併せる方向で行われていることが多い、この療育に当たる人々に筆者は大変頭が下がる思いである。
その一方で少数者(自閉症スペクトラム当事者)が、多数者(定型発達者・健常者)に合わせるのみの一方通行には、社会での共生において限界がある考える自閉症研究者のひとりでもある。
ひとつ、療育を受けている自閉症当事者少女の発言を引いておく。
「なぜ、私たちが変わらなければならないんですか?もうコミュニケーションスキルとか、変われ、変われと言われるのはうんざりなんです」
つまり多数者が少数者を理解するという点において、番組はすぐれた効果を発揮したと思われる。研究最前線の分量を控えめにして、当事者理解を軸に据えたのはスタッフの深い見識である。
時間の制約もあり、今回の番組は発達障害の比較的高機能な(知的障害のない。発話が出来る。と言った意味であり、特殊な高い能力を持っているという意味ではない。かつての診断名で言うと自閉症なら、アスペルガー症候群など)人々を特に取り上げていたが、一方で自閉症スペクトラムなら重度で発話のないカナータイプの自閉症者も存在することを、今後伝えって言って欲しいと感じた。今後のプロジェクトでおそらく言及する事と考えられるが切に希望する。
番組はDSM-5(アメリカ精神医学界の診断マニュアル)を、ベースにつくられていると思われるから、その中でLD(学習障害)ADHD(注意欠如多動性障害)や自閉症スペクトラム障害と同列にある、発達障害の枠組みで説明される障害「吃音、小児期発症の流暢性障害」にも、言及して欲しいと感じる。
とにもかくにも温かく見守っていきたいNHKの大型企画「発達障害プロジェクト」である。
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