<テレビは安売り競争に突入した>フジテレビの視聴率低下はテレビ界全体の凋落を加速させる

社会・メディア

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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他のテレビ局の社員だからと言っても、フジテレビの視聴率低下を喜んでいる人はいない。喜んでいるのはよほどのバカか、性格の悪い人だけだ。
敵失を、なぜ喜ばない、喜ばないのか。
フジテレビの視聴率が下がったことで、スポンサーが離れた。どこへ行ったかというとテレビ朝日に行った。テレビ朝日は、このところ視聴率2位だが、かつては「ふりむけばテレビ東京」といわれるほど、視聴率が悪かった。そのせいで、長いことCM料を安くせざるをえなかった。
調子が良くなってCM料を上げたかというと、上げなかった。おつきあいもあるし、このところのテレビ全体の衰退で上げようにも上げられなかったのである。据え置いた。
フジテレビはそのむかし「視聴率三冠王」を続けてきた局なので、CM料を上げ続けてきた。その間はバブルを挟む時期でもあったので上げるのも容易だった。スポンサーが列をなしてCM枠を売ってくれと列に並んでいたのだ。
電通も博報堂も列を煽った。イメージで表現すると、フジテレビが1分130円で売っていたとすれば、テレビ朝日は80円で売っていた。ところが、スポンサーは、このところこぞって1分80円のCMのほうを買うようになった。
そうなれば、もう価格競争である。安売りには安売りで対抗するマイナススパイアラルにハマっていく。つまり、テレビ界全体の売り上げは減っていく。テレビ界全体の凋落は加速する。
この状態を喜ぶテレビ局員はいない。
昔の労働争議の労使協調路線なら15%の賃金カットを組合は受け入れます。とでもなるのだろうか。この加速をどうはねのければいいか。テレビ局が持っている資産はソフト制作能力である。
何もそれを自局のためだけに使う必要はないのである。
 
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