<フジテレビ凋落の理由>テレビを見なくなった若者に向けた番組ばかりを作る愚

社会・メディア

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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フジテレビの視聴率が凋落した理由は単純明快である。若い人がテレビを見なくなったからである。若い人が見ないのに未だに若い人相手に番組をつくっているからである。
つまり、業態転換に失敗したのである。フジテレビは30年ほど前に業態転換に成功した。それは笑いを中心としたバラエティ番組をゴールデンに定着させると言う業態転換であった。
30年間、そのモデルは金を生んできた。ところが、今は業態転換ができずに、およそ30年と言われる「業態の寿命」がきてしまったと言うことだ。
フジテレビばかりではない。TBSも調子が悪い。TBSはずっと高齢層に支持されていた局であったが、フジテレビの成功をみて焦った。そして「高齢者は購買力が無いので、若い層の視聴率を取らねばならない、それはスポンサーも望んでいることだ」という奇妙な論理を組み立てて現場を督励した。
結果、現場は混乱した。大体、前提が間違っている。
「高齢者は購買力が無い」と言うが、団塊の世代は金持ちだ。購買力はあるのに欲しいものがないだけだ。欲しいものがないのは、企業=スポンサーの責任である。
「若い層の視聴率を取らねばならない」と言うが、若い人はテレビを面白いと思っていない。加えて言うならこの人たちは物欲がない。かっこいい自分のクルマで走るよりのレンタカーで良いと言う人が多い。
視聴率が上がるとスポンサーは、高いCM料金を払わなければならなくなるが、効果が薄いことが分かっているテレビCMに金は払いたくない。スポンサーは視聴率が高くなることを別に望んでいない。「下町ロケット」は20%越えしたが、支えているのは高年齢層である。
高年齢層に毛嫌いされた局は視聴率が上がらない。調子が良いように見えるテレビ朝日は若い人に好かれている局だとは誰も思わないだろう。「報道ステーション」に「相棒」に「徹子の部屋」である。
テレビ東京も同様。意欲的な企画が多いとされるが、「電通買い取り枠」のスポンサー付きである。蛭子さんのバスの旅の局である。
視聴率ダントツの日本テレビはどうか「笑点」の局である。
高齢者が視聴率を支えているのはどの局の人も分かっているだろうから五十肩の直し方やパラパラのチャーハンの作り方ばかり一日に何度も見ることになっている。
いま、実験的とも言える「トンガった企画」を一番やっているのはNHKである。NHKくらい安定的にオカネが入るシステムになっていないと民放は冒険ができない。冒険をしない民放は、結果、五十肩とパラパラチャーハンである。
でも、NHKの実験的な企画は皆、悲惨な視聴率。大相撲中継は15%近くの視聴率を取るがその中で若い人の割合はたった1%。
 
民放は「分かっているのに、なぜ業態転換できないのか」。それは、CMと代理店とテレビ局の3者でつくったビジネスモデルが余りにおいしかったので、思い出にすがりついているからである。
フジテレビはもう赤字である。
 
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