芸能事務所がタレントの移籍を制限するのは独禁法違反?

社会・メディア

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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NHKが次のようなニュースを報じている。
(以下、引用)

「ラグビーのトップリーグがチームを移籍した選手の公式戦への出場を制限する規約を設けていることについて、公正取引委員会がトップリーグを主催する日本ラグビー協会から聞き取り調査を行い、独占禁止法に抵触する不当な制限にあたるかどうか検討を始めたことが関係者への取材でわかりました。」
「ラグビーのトップリーグは選手がチームを移籍した場合、前の所属チームの承諾が得られなければ、1年間、公式戦に出場できないとする規約を設けていて、日本代表クラスのトップ選手が移籍先のチームで公式戦に出場できなくなったり、移籍を断念したりするケースが出ているということです。」
「このため公正取引委員会がトップリーグを主催する日本ラグビー協会から聞き取り調査を行い、こうした規約が独占禁止法に抵触する不当な制限にあたるかどうか検討を始めたことが関係者への取材でわかりました」

(以上、引用)
法律論のよく分かっていない素人である筆者の意見ではあるが、これは常識的に考えて、強い者がその立場を利用した不当な契約ではないか。もちろん、「契約の自由」というものがあって、当事者同士が認めればどんなひどい契約も成立する。
ただし、それは他の様々な法律で制限される。独禁法はその制限法の1つであり。その精神は強い者が弱い者にその力を持って不当な契約を結ばせしめてはならないと言うことだ。
【参考】<キムタク叩きは無意味>木村拓哉VS他メンバーの構図は何のため?https://mediagong.jp/?p=22517
これは何もラグビー界だけのことではない。芸能界でもまた同じ。以下、NHKニュースから。
(以下、引用)

「公正取引委員会はラグビーなどスポーツ選手の移籍のほか、芸能人の所属事務所からの独立や移籍をめぐるトラブルなどについても調査を進めていて、来月から有識者による会議を開き、独占禁止法に抵触するような実態がないかどうか調査結果をまとめることにしています」

(以上、引用)
芸能事務所の契約書には「甲(芸能事務所)が認めない限り乙(芸能人)は移籍したり辞めたり出来ない」という条項があるケースがあるが、これはどう考えても不当な契約である。芸能人になりたい一心の新人は、言われるままに契約を結んでしまうのが通常だと思われる。
芸能事務所側は「芸能事務所はタレントを数年かけて育成し、売れた段階で回収するビジネス」であるから、辞められたら困ると言うことだが、芸能人の成長を願うのならば、年限を限った契約にすれば良いのである。
事実上「芸能業界内での引き抜きはタブーになっており、タレントが事務所の許可無く移籍や独立するのはおよそ不可能」なのは、問題である。公正取引委員会が、これら実態をどう調査して、どんな判断を示すか注目である。
 
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