高橋尚子「募金ラン」は24時テレビを刷新したか?

テレビ

宮室信洋(メディア評論家)

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今年の『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ系列)のマラソン企画は高橋尚子による『24時間募金ラン』となった。伊集院光はラジオで疑問を投げかけたが、結果、どのような企画となったのであろうか。本稿では、様々な意見が飛び交った高橋尚子による『24時間募金ラン』を伊集院光の疑問と共に考察したい。

今年の『24時間テレビ』では新型コロナウイルス予防の観点から、毎年恒例のチャリティーマラソンを中止し、高橋尚子による『24時間募金ラン』を行った。これは高橋発案によるもので、高橋尚子が「今できること」として行ったものであるという。1周5kmを走る毎に高橋尚子自身が10万円を寄付するというもので、他にも土屋太鳳ら賛同する仲間が参加した。

これに対し、伊集院光が8月17日の深夜ラジオ『JUNK伊集院光・深夜の馬鹿力(TBSラジオ系列)において、疑問を呈するコメントをしている。伊集院曰く、高橋尚子が走った上で、自分で10万円を寄付するのはおかしいのではないか、ということだ。

[参考]<24時間テレビ>清く正しく美しい障害者を創る「感動ポルノ」という嘘

高橋尚子が走ったら、前澤友作が10万円を寄付する・・・などのように、もう1人、間に挟まないと違和感があるというのだ。また、走らないで寄付してもいいのではないか、という。なお、高橋は偽善と言われることを気にかけていたそうだが、それに対し伊集院は偽善だとは思わず、そのような批判をする人とは一線を引いている、という立ち位置らしい。

高橋のマラソン企画は、『24時間テレビ』としては新しいシステムとなった。元オリンピック金メダリストのランナーである高橋尚子による提案ということで、目標を達成しても時間いっぱいまで走り続け、マラソンは辛いものではなく楽しいものだというメッセージを伝えることにも寄与しただろう。放送中の説明によれば「募金ラン」はマラソンをした上で寄付をするというイベント性と寄付行為を重ねたもので、その意義を伝えるのに、高橋尚子のパフォーマンスは十分に説得力があった。

もうひとつの伊集院のコメントを参照すれば、それはマラソン自体への批判だが、かつて『26時間テレビ』(フジテレビ系列)の時に島田紳助が唱えた「苦しさの先の感動を求めた苦行」はあまり説得力を持たなかったが、今回は苦しいものではない、という点で、その批判をクリアしていたように思う事。

これまでのマラソン企画と比較して、マラソン選手や金メダリストらアスリートやアスリート型のトップ女優である土屋太鳳が参加した今回の募金ランは、大義名分とエンタメ性を今まで以上に高めた完璧な企画だったと言えよう。ただ、武道館へのゴールがなかったのはやはり一定の物足りなさは残ったかもしれない。とはいえ、『24時間テレビ』のマラソン企画を刷新させるものであったと思う。

 

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