<都知事選>泡沫候補だけを集めたテレビ討論会の可能性
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
***
7月12日に放送されたTBS「Nスタ」が都知事選に出馬表明している、小池百合子氏、宇都宮健児氏、増田寛也氏、鳥越俊太郎氏による討論会をいち早く実施した。その志を筆者は賞賛したい。
NHKに先んじて4人を揃えたスタッフはすばらしい機動力である。裏番組は大相撲だから、視聴率は取れないだろうが、こういう真正面からの企画を続けることが将来の番組の力になるのは間違いない。
4者の討論会は、それぞれが「都知事という職務」に具体的イメージをきちんと持っているかどうかが分かって興味深かった。
【参考】<AKBな都知事選>石田純一という「軽い神輿」を誰がかつぐのか?
筆者がこのような時に、誰を選ぶかの判断をする基準にするのは「前の仕事が行き詰まって立候補したのかどうか」である。前の仕事が行き詰まって立候補した人にろくな者はいない、というのが筆者の考えだ。4人の出馬表明者のうち、誰が「前の仕事が行き詰まって出馬表明した人か」はここでは言及を避けておこう。
さて、次の話は鳥越俊太郎氏のことではない、と断って論を進める。よくジャーナリストやコメンテーターから立候補する人がいるが、この場合大抵、マスコミ人として行き詰まったからである。その上ジャーナリストは「外側から見る仕事」なので、内側の仕事になる政治家としてはあまり向いていないのではないか、と筆者は思う。ジャーナリスト出身で大物政治家になった人はいない。
行き詰まり系には他に、元プロレスラー、元学校の先生、元女優、元歌手、元オリンピック選手、元小説家などがいる。これは過去の「話題の立候補者たち」の顔を思い浮かべてみれば分かる。
さて、テレビ放送による公開討論会は候補者同士が意見を交わし合う、一方的な意見陳述ではない分、候補者のことがよく分かる、選ぶ参考になる。これはぜひ、どんどんやって欲しい、というのが筆者の考えだ。
【参考】<三宅洋平氏落選>実態なき支持層が産み出した「選挙フェス」という都市伝説
しかしながら、今回の「Nスタ」のテレビ討論は、告示前だから出来た番組である。なぜなら、7月14日の告示後は公職選挙法によってこれが行えなくなるというのがテレビ業界の弱腰の判断だからである。(公開討論は長崎県知事選挙の時、長崎文化放送が放映したことなどがある)
その根拠とするのは公職選挙法第151条の5 「選挙運動放送の制限」である。
「何人も、この法律に規定する場合を除く外、放送設備(広告放送設備、共同聴取用放送設備その他の有線電気通信設備を含む。)を使用して、選挙運動のために放送をし又は放送をさせることができない。」
もうひとつは、候補者に対する公平性についてである。今回の都知事選では4氏の他にもいわゆる泡沫候補がたくさん立候補するだろう。しかし、これらの人々を無視して4氏だけの公開討論会を放送するのは不公平だ、という考えだ。
ならば、と言うことで「構想日本」が面白い提案をしている。深夜に長時間の枠を取って「泡沫候補だけの討論会」を実施すればよい、という提案だ。テレビ屋の感覚として、これは面白い番組になる、と思う。視聴率も取れるはずだ。
これを実施しておけば、有力候補だけの討論会をやっても不公平にはならないだろう。これを実現させる勇敢なテレビ局が登場してほしいものだ。
【あわせて読みたい】