「グルメンピック詐欺事件」パート2と化す東京マラソン -植草一秀

社会・メディア

植草一秀[経済評論家]

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中国本土の新型コロナウイルスの感染者数は2月18日時点で72400人超となった。中国本土での死者数は1869人に達した。日本での感染者数は615人に達した。中国以外では最大の感染者数である。

クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの感染者数は542人に達した。安倍内閣はクルーズ船の感染者数を日本での感染者数に含めないように工作活動を展開しているが、ダイヤモンド・プリンセスは2月1日に沖縄県那覇港に寄港し、検疫ならびに入国手続きを終えている。

その後に横浜に帰港し、上陸を阻止されたものである。日本での感染者数に含めるしかない。加藤勝信厚労相は、クルーズ船に乗員、乗客を船内に長期間拘束したことについて、「検疫をしていただけだ」と開き直った。問題の所在をまったく理解してない。衛生状態の悪い船内に乗員、乗客を拘束したことで感染者数が爆発的に拡大したことについて、安倍内閣の対応に問題があったのではないかとの質問の主旨に答えていない。

衛生状態の悪い狭い船内に3711人の乗員、乗客を拘束したために「船内感染」が爆発的に拡大したと考えられる。そのことの責任が問われている。加藤厚労相が主張するように、「検疫をしていただけ」ならば、2月4日の段階で、乗員、乗客3711人に対するPCR検査実施の方針を決定するべきだった。テレビ番組に出演した専門家がPCRの検査能力は全国で1日7000件と述べていたが、実際にはこれよりは小さかった。

しかし、3711人の乗員、乗客の下船を実施するには全員に対するPCR検査が必要不可欠だった。優先順位を定めて数日間の時間をかけてPCR検査を実施し、感染者と非感染者を区分することが必要だった。2月4日から2週間の時間が経過した。乗員、乗客はクルーズ船内に拘束され、この期間に感染が爆発的に広がったと考えられる。安倍内閣の対応が「船内感染」を爆発的に拡大させた疑いが高い。

爆発的な感染拡大が観測されているのは中国湖北省とダイヤモンド・プリンセス号の2箇所なのだ。3711人を船内に拘束する判断を下した背景は、ウイルスの日本侵入を阻止するとの「水際対策」の考え方が採られたことにあると理解されている。ところが、安倍内閣は中国からの人の移動を野放しにしてきた。中国での感染者は湖北省だけに存在するわけでない。ザルの水際対策を実行していたわけで、そのために、国内での感染の広がりが観察され始めている。

話は変わるが、3月1日に実施予定の東京マラソンについて、主催者が一般ランナーの参加を中止する方針を発表した。共催者の東京都の小池百合子知事は苦渋の決断だと述べた。大会主催者は出場資格を持ちながら走れなかった一般ランナーに対しては、来年の大会の出場権を与えると発表したが、大会参加料(フルマラソンの国内ランナーは1万6200円、海外ランナーは1万8200円)や寄付金は返金しないとした。来年の大会に出場する人は来年の参加料を再度支払う必要があるとしている。

3月1日の東京マラソンは「グルメンピックPart2」に名称を変更するべきだ。

グルメンピック事件とは、2017年2月に東京調布の味の素スタジアムパークで2週間開催するとして、全国の飲食店508店から総額1億3000万円の参加費を支払わせておきながらイベントが開かれなかったという詐欺事件だ。東京マラソンの一般参加者の参加を中止して、参加料を返却しないのは「グルメンピック事件」に匹敵する詐欺的行為だ。主催者は「規約に基づく措置」と開き直るが、公序良俗に反する詐欺的行為である。

コロナウイルスの感染が国内で拡大すれば東京五輪の開催は不可能になる。現時点でその可能性が明確に浮上しているのであるから、安倍内閣は五輪中止の可能性を早急にアナウンスするべきである。すべてが後手に回る安倍内閣。五輪中止の判断が後手後手に回ってからになることは避けるべきだ。

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