<2015メディアゴンはこう考える④消費税の軽減税率の功罪>軽減税率の導入が新たな政治利権を産み出す?

政治経済

石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]
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2015年度の税制は、昨年2014年12月30日に決定された自民党・公明党の「平成27年度税制改正大綱」で書かれた通りに制度変更や政策審議が行われることになる。
この中で、今年最も議論になるのは「消費税の軽減税率制度」であろう。この大綱では、消費税の軽減税率について、「関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する。平成29年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について、早急に具体的な検討を進める」としている。
消費税に軽減税率を導入することの是非はさておき、軽減税率を導入すれば、その分だけ税収減になる。軽減税率の対象分野は、今のところ、飲食料品分野が想定されている。下の資料によると、全ての飲食料品を対象とする場合には1%当たりの税収は6,600億円。これを減税額と呼ぶか、税収減と呼ぶかは、立場によって異なる。
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新たな社会保障制度として2015年度に本格スタートを目指している「子ども・子育て支援新制度」に充てられる財源規模は7,000億円。これは、消費税の軽減税率を最大限導入した場合に確保できない財源規模とほぼ同じ水準。社会保障財源を確保するための消費増税で、新たな社会保障制度を賄う規模の財源が確保できないという話である。
別の視点では、税制改正を巡る毎年のドタバタ劇を思うと、軽減税率の導入は新たな政治利権を産み出すだろう。税にも予算にも政治利権が付いていることは何ら不思議なことではない。しかし、日本の税制を巡る意思決定プロセスを慮ると、消費税であれ他の税制であれ、軽減税率も含めたいわゆる“租税特別措置”的なものは、極力ない方が良い。
ところで、日本新聞協会が新聞に課せられる消費税の軽減税率を要求している。理由は、同協会のホームページで次のように主張している。

「みなさんがニュースや知識を得るための負担を減らすためです。新聞界が軽減税率を求めているのは購読料金に対してです。読者の負担を軽くすることは、活字文化の維持、普及にとって不可欠だと考えています。新聞協会が実施した調査でも、8割を超える国民が軽減税率の導入を求めていて、そのうち4分の3が新聞や書籍にも軽減税率を適用するよう望んでいます」

こんなことを大真面目に発している新聞社には大きな違和感を覚えるが、それはそれとして、政治的に考えれば、新聞に軽減税率が導入されたとしたら、政治がメディアを支配する手法がまた一つ増えることになる。
日本の場合、それは功罪両面がある。税負担の公平性の観点からは、新聞に軽減税率が適用されることは、その要望理由からしても甚だ笑止千万と言わざるを得ない。
 
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