<笑いの原点は「陰口」>ネットもニコ動も「テレビ化」してつまらなくなった


高橋維新[弁護士]

 

笑いの原点は、陰口である。

笑いは、対象となる人を傷つける業の深い一面を持っている。これは、どうしようもなく不可避的に持っている。この弊害は、大昔から発見されていた。ヒトはこの弊害にどう対処したか。ヒトではない動物や景色を笑うというのは一つのやり方だろう。笑われることを了解している人(これを芸人という)を笑うというのも一つのやり方だろう。

でもこれだけでは笑いのバリエーションに乏しくなってしまう。動物ではなく人を笑いたい、笑われるのが嫌な人も笑いたい。連鎖力が作用する中でみんなで笑いあいたい。

ならば、笑われている人が自分が笑われていることに気付かないような形で笑えばよい。これが、陰口である。陰口は、今も昔も広く行われている。試験が終わった後に、電車の中で友人と「あの試験監督、手際が悪かったな」と笑いあうようなものも立派な陰口である。

陰口を言ったことがない人がいるのだろうか。いないだろう。ヒトは陰口を言いあうことで、ガス抜きをしながら共同体の連帯を高めてきたのである。

この陰口を全世界に向けて公開したのが、雑誌や、新聞や、テレビといったメディアである。ヒトは、おもしろい陰口を仲間内で言い合っているだけでは飽き足らなくなったのである。もっと多くの人と「笑う」という共同作業を通じて連帯したかったのである。

ところがこれには問題がある。メディアを使って悪口を言ってしまえば、それはもうほとんど陰口ではない。悪口を言われている人が、自分が悪口を言われていることに気が付いてしまう。そのことが分かってから、メディアはバッシングを受けることになった。

そこで悪口を言う場合は、できるだけバレないようなやり方でやるようにした。テレビであれば、ゴールデンタイムにやっていたものを深夜にしかやらなくなったし、地上波でやっていたものをCSでしかやらなくなった。だから、テレビはおもしろくなくなった。「こんなにおもしろい陰口をみんなで共有したい」という当初の目標が、どんどん骨抜きになっていったからである。

今は、その陰口は、インターネットが担っている。テレビでは放映が憚られるような陰口が、インターネットには氾濫している。これを読んで笑える人が一緒になって笑いあい、楽しんでいる。テレビと違って、お目当ての陰口を自分で探さなければ読めないので、陰口を言われている人に気付かれないような構造にもなっている。

ただこの状態だと、当然ながら、テレビほど多くの人と陰口を共有できない。そこで欲を出して、テレビのように大々的に陰口を広告していくと、途端に陰口の存在が気付かれて、今のテレビのように萎縮してしまう。

最近では、もうニコニコ動画にそのような傾向が見られて久しい。ニコニコ動画がおもしろくなくなったのは、テレビになろうとした結果、テレビのいいところも悪いところも全部受け止めてしまったからである。本来仲間内だけで楽しんでいた陰口を、欲を出してもっと多くの人に知ってもらおうとした結果、規制規制でがんじがらめになってしまったのである。

筆者はこの現象をインターネットのテレビ化と呼んでいる。そもそも「テレビがつまらない」という義憤から出発したはずのインターネットが、テレビと同じ方向に向かってしまったのは、なんとも逆説的である。

いや、それでいいという見方もできる。彼らがおもしろかった昔のテレビになろうとしただけだったら、テレビになれて本望だったのかね。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。